西部警察を巡る「石原裕次郎・渡哲也」の激情バトル(2)裕次郎に賭けた、渡の決断 (2/2ページ)
精一杯やらせていただきます」
──ありがとう。じゃ、また明日。
この時、渡は俳優としての可能性を自ら封印したのだった──。
日曜夜8時のゴールデンタイムはNHK大河ドラマの独壇場で、他局にとって不毛の時間帯だった。「西部警察」は、あえてここにぶつけた。
「コンクリートでも割れ目に種まきゃ、花だって咲く。大河ドラマ上等。負ける気はしない」
裕次郎は記者会見の席で爽やかに笑って言った。
その言葉どおり、大河ドラマの向こうを張って「西部警察」は快進撃を続けていく。
だが、アクシデントはいつも得意の絶頂で襲いかかってくる。
昭和56年4月25日、裕次郎が倒れて慶應病院に救急搬送される。乖離性動脈瘤I型──。入院して数日後、血圧が288までハネ上がり、緊急手術が行われる。成功率はわずかに3%。裕次郎はこれに打ち克って「奇跡の生還」を果たす。
だが、意識は混濁し、集中治療室で支離滅裂な言葉がうわごとのように飛び出す。渡は思い悩み、そして決意する。
(痴呆状態になった裕次郎を世間にさらすくらいなら、ナイスガイのまま人生を終わらせてあげたい)
自分のこの手で‥‥。渡の心中を察したコマサが驚愕し、声を荒げた。
「テツ、お前、何考えているんだ!」
こうして5ヵ月におよぶ闘病の末、危機を脱した裕次郎は同年9月1日に退院する。
作家・向谷匡史