初音ミクより3世紀早い!千本桜といえばやっぱり不朽の名作「義経千本桜」は外せない
みなさんは「千本桜」と聞いて、なにを思い浮かべますか?初音ミクでしょうか、或いは和楽器バンドでしょうか。「千本桜」という言葉が連想させる遥かな情景は、現代のポップスの世界でも私たちの心を捉えて離しません。
歌舞伎ファンの私はといえば、何をおいても不朽の名作として今なお別格の人気を誇る作品「義経千本桜」を連想します。壮大なその世界を少しだけご紹介したいと思います。
(作中にも登場する、吉野山の桜 出典:写真AC)
義経千本桜の内容1747年に人形浄瑠璃として初演された「義経千本桜」は、源平の戦いが終わった平安末期が舞台。兄・頼朝から謀反を疑われた義経が、都を追われるところから物語が始まります。
落ち延びて行く旅路の中で義経は壇ノ浦の戦いで絶命したはずの平家の侍のドラマに触れ、彼らが実は生きていたという設定で繰り広げられる悲劇の連続を見届けてゆく…という内容です。
平家再興を願いながらも果たすことができない武将たちの無念や、別れゆく父子の姿など、深い悲しみの物語が続きます。そして物語のクライマックス「川連法眼館の場」は「四の切」と通称され、親しみやすく目にも美しい名場面として高い人気を誇っています。
お父さんお母さん恋しさに鎌倉方から逃れ、川連法眼の館に匿われた義経は愛妾・静御前と再会。彼女は、義経から形見にと預けられた「初音の鼓」を肌身離さず旅を続けていました。
再会を喜ぶ二人でしたが、静御前のお供に付けていたはずの義経家臣・佐藤四郎兵衛忠信が見当たりません。不審に思った静御前が初音の鼓を打つと、不思議なことにどこからともなく狐が出現!
実はこの狐、初音の鼓の皮に使われている雌狐・雄狐の子供だったのです。親恋しさの一心で義経家臣の佐藤四郎兵衛忠信に化け、静御前のお供として初音の鼓の傍らで旅を続けていたのでした。
義経はそんな子狐の親を慕う無垢な思いを受けて、兄・頼朝に憎まれた自分自身の肉親との縁の薄さを嘆きます。憎みあい、争いと無念を繰り返してゆく…そんな人間の世を儚んだ義経は、これまでの静御前の守護を感謝するとともに初音の鼓を子狐に贈ることにしたのでした。
ここでの狐の芝居は大変特徴的な愛らしいもので、穏やかに涙を誘います。初音の鼓を手に入れ大喜びした子狐が、嬉しそうに空を飛んで行く「宙乗り」という幕切れの演出も有名です。
これでもかこれでもかという悲しみの連続のあとで、おとぎ話のように幻想的なふんわりとした幕切れを迎える「義経千本桜」。数あるお芝居の中から選ばれた「三大狂言」のひとつですから、機会があればぜひご覧ください!
義経千本桜日本の文化と「今」をつなぐ - Japaaan