洗脳(マインドコントロール)にまつわる実話とそれがアメリカという国の形成に与えた影響

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 「洗脳(マインドコントロール)」それについて初めて警告を発したのはジャーナリストのエドワード・ハンターだ。

 「洗脳戦術が中国人を共産党の先兵に変えている」と1950年9月のマイアミ・デイリーニュースの見出しを飾った。その記事は、毛沢東の赤軍が古代の技法を用いて人民を心のない共産党のロボットに変えていると訴えていた。この技術を「洗脳」と呼んだ。

 共産党とマインドコントロールの恐怖がアメリカを襲ったのはこれが初めてではない。1946年には全米商工会議所が共産主義の広まりを懸念し、社会主義や共産主義を排除せよと提案した。当初、それほど反響がなかったハンターの記事であるが、朝鮮戦争で強いインパクトを与え始める。

・朝鮮戦争と洗脳
 エドワード・ハンターは1952年、朝鮮半島で撃たれ、捕虜となった。同じ目に遭った最も階級が高かった人物はフランク・シュワブル大佐である。

 1953年2月にもなると、彼らは朝鮮の民間人に対して細菌兵器を使用したという虚偽の告白をするようになった。アメリカの世論はショックを受け、朝鮮からの撤退を訴えるようになる。決定打となったのは米兵21名が帰還を拒否したことだ。

 洗脳の脅威が突如として現実のものとなった。米軍は兵士の自白を否定したが、なぜそのような自白を強要できたのか洗脳以外に説明する術はなかった。

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・共産主義と洗脳
 マインドコントロールはサブカルチャーでも人気のテーマとなり、映画『ボディ・スナッチャー』や『影なき狙撃者』で心を失くした人間が描かれた。

 またFBI長官のエドガー・フーバーも自著の中で思考のコントロールについて繰り返し言及した。1980年にはアメリカ精神医学会まで洗脳を取り扱うようになる。

 しかし中国やソ連の共産主義者は本当に自由意志を奪う方法を知っていたのだろうか? 答えはノーである。

 だが、アメリカは洗脳との戦いを止めなかった。その根本的な疑問は「なぜ共産主義に転向するのか?」である。

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・心理的拷問による洗脳
 洗脳には複数の定義がある。ハンター(彼はCIAのプロパガンダ工作員であった)のそれは、西洋人には理解できない東洋の神秘である。

 しかし朝鮮戦争から帰還した米兵を研究した専門家にとって、それはそれほど神秘的ではなかった。拷問である。

 朝鮮戦争で捕虜となった米兵は、立ち続けることを強要される、食事や睡眠が与えられない、独房での監禁、共産主義思想に繰り返し暴露されるといった拷問を受けていた。

 米軍は戦争捕虜が何をされたのか、彼らは”影なき狙撃者”として本当に操られているのか関心を抱いていた。だが実際の彼らは工作員になったわけではなく、酷いトラウマを抱えていただけなのだ。

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 1950年代初頭、軍が心理的拷問についての研究結果を公表した。その結論は兵士がリハビリを必要としているというものではなく、単純に弱かったというものだ。

 軍は洗脳という幻想への関心を急速に失い、兵士が拷問に耐えられないことを懸念するようになった。その結果がSERE(生存、回避、抵抗、脱走)という精神的拷問によって精神的拷問に対する免疫をつけさせるプログラムだ。 

 一方、大衆は催眠術のような洗脳という幻想に夢中だった。その原因の一端を担ったのがヨースト・メアローとウィリアム・サーガントというサブカル御用達心理学者だ。

 軍が雇用した研究者とは異なり、彼らは洗脳とアメリカのマーケティング担当者や共産主義圏のプロパガンダが使う戦術を関連づけた。

 メアローは、ドイツやソ連の全体主義者あるいは中国の共産主義者は過去も現在も思考コントロールにかなり成功していると考えた。そして、その威力や精度は科学的事実の裏付けによって一層強化されていると述べた。

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・洗脳の恐怖がアメリカへ与えた影響
 ”行動主義”と呼ばれた当時の人間の心に関する支配的な理論も追い風となった。パブロフの犬を思い出して欲しい。犬に餌を与える際にベルを鳴らし続けると、ベルの音だけで犬はよだれを流すようになる。

 行動主義の基本的な前提は、人間の心はまっさらな状態であり、社会的な条件によって形作られるというものだ。ロシアにイワン・パブロフがいたように、アメリカにはバラス・スキナーがおり、心理学によって行動の予測やコントロールができると論じられた。

 マインドコントロールの恐怖は依然としてアメリカを震撼させており、アレン・ダレスCIA長官は幻覚剤(LSDなど)や生体操作(睡眠の剥奪など)で洗脳が可能なのかどうか確かめる実験を許可した。

 1953年、プロジェクトMK-ULTRAが実施され、10年以上も続けられた。しかしウォーターゲート事件が発生すると、実験の露見を恐れたCIAはその証拠隠滅を図る。それでも20,000点もの関連文書が残されており、薬剤、感覚遮断、催眠、電気ショックを用いた人体実験が行われていた事実が明らかとなった。

 こうした洗脳実験の伝統は今もなおアメリカで生きている。かつてアメリカ兵を鍛えるために使われたものと同じ方法が、アブグレイブ刑務所やグアンタナモ湾収容キャンプの捕虜から供述を得るために使用された。

 催眠術のような洗脳を真面目に取り上げる者は少ないが、この類のコントロールを危険視する者は今もなお数多くいる。例えば、イスラム国や過激派に関する議論を考えてみるといい。そこでは若者は基本的に洗脳状態にあるのだとされる。そして、テロリストを一般市民に戻すことはできるだろうか、と続くのだ。それを目指したプログラムも存在する。

 洗脳という概念はそれが明らかにしていること以上に、曖昧にすることの方が多い。それは個人の経歴を詳しく掘り下げることを拒否する上で都合がいい。そして人間の行動は事前に知ることが可能であると想定させるのだ。

 

 現時点で、完璧な洗脳はフィクションの中にしかない。が、それも脳を構成するシナプスのネットワークをハッキングできるようになれば分からない。


via:neatoramasmithsonianmagなど/ translated hiroching / edited by parumo



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