サイバーエージェントが当面不採算でも動画サイトで勝負に打って出るワケ|やまもといちろうコラム (2/2ページ)
■事業成功の可能性は?
一方、AbemaTVはサイバーエージェントとテレビ朝日の組み合わせで、リスクはサイバーエージェントが取るにせよ全体的なポートフォリオはやはりテレビ業界の常識がかなり貫徹して、そこに番組ごとに制作会社がぶら下がっている仕組みである分、「やり続ければ、いつかは水面上に顔が出るはずだ」という考えになるのもあながち間違いではないのかもしれません。
実際、上記のIT mediaの記事でもサイバーエージェント藤田晋社長が「引き続き投資は行っていく」というスタンスは崩していません。もっとも、AbemaTVでも明らかにスコアの低そうな番組はどんどん潰れているようにも見えますが、ようやく番組の改廃ができるぐらいまでは地上波のような、メディアプラットフォームとしての機能ができてきたと言えなくもありません。
また、ネット業界の風雲児としてサイバーエージェントというとキラキラしたイメージで売る、あんまりコンプライアンスを重視しない社風がたびたびトラブルの当事者になっていたわけですが、テレビ朝日効果なのか、各方面でサイバーエージェントが問題の中心になることがぐっと減り、IT業界の中でも比較的静かなふるまいになってきた印象があります。
もっとも、サイバーエージェントグループ全体で見ると、ヒットタイトルを擁し高い利益率で業界に君臨するCygamesが相変わらず各方面で強気で微妙な商慣行をやらかしているようですが、往年のサイバーエージェントの仕事ぶりを知る業界関係者からすれば「ずいぶん大人しくなったなあ」という感覚は拭えません。それがベンチャー企業として望ましいのかどうかは別としても、テレビ局のような装置産業を超えていくとなると、やはりカジュアルでポップなIT企業のカルチャー一辺倒ではなかなか厳しいのかもしれません。
IT業界もいろいろと煮詰まり、テクノロジードリブンで大きな市場を狙っていくにはやはり専業でなければ生きていけないぐらいに投資水準が上がってきたのは事実です。その意味では、コンテンツ商売に打って出るぐらいしか、藤田社長の気持ちの届く範囲内では巨額投資に足るビジネスが思いつかなかったのかもしれません。それまでも、スマホ向けに投資を振り分けて大量のアプリをグループ挙げて投入しようとした過去がありましたが、そこで得られた果実はそう多くはありませんでした──ゲーム以外。たぶん、藤田社長はあまりゲーム事業には思い入れがないからこそ、イケてると思える他人に任せて利益を出させることに成功したのでしょう。その意味では、テレビ番組などのコンテンツ事業は藤田社長自らの「やりたいこと」に相違なく、だからこそ目先の損害にこだわらずのめり込めるのだな、ということではないかと感じます。
その後の事業の推移についてはあまり楽観視できるものではありませんが、藤田社長は何度も「そろそろ駄目じゃないか?」という下馬評を持ち前の豪運で切り抜けてきて、期待以上の利益を叩き出してきた実績の持ち主です。きっとなんかうまくやってくれるに相違ありません。ゆるゆると期待して待ちたいと思います。
著者プロフィール

ブロガー/個人投資家
やまもといちろう
慶應義塾大学卒業。会社経営の傍ら、作家、ブロガーとしても活躍。著書に『ネット右翼の矛盾 憂国が招く「亡国」』(宝島社新書)など多数
公式サイト/やまもといちろうBLOG(ブログ)
やまもと氏がホストを務めるオンラインサロン/デイリーニュースオンライン presents 世の中のミカタ総研