おそらく、購入した人のほとんどは、アウトドアなどに利用せず、今まで通りに日常の買い物やお子さんの送り迎えに利用するのですが、不満はないはずです。なぜなら最も多く使用する奥様は「ハスラーは見た目がカワイイ」という感想を持っているからです。

スペーシアの方が室内が広いし、燃費や使い勝手はワゴンRの方が勝っていても、ハスラーが売れているのは、ご主人のこうありたいという「妄想」を膨らませ、かつ奥様を「カワイイ」と思わせる絶妙なデザインが全てなのです。

さて、N-BOXスラッシュはというと、ハスラーのようなアウトドアイメージはまったくありません。N-BOXとの違いは、広大な室内スペースの「肝」とも言える高い屋根を、あえて低くカットしたチョップドルーフです。確かにカッコ良くなったのですが「なぜ、わざわざ車高を低く？」という疑問が頭をよぎります。そして、室内に入ると「なるほど！」と、その疑問は解決します。

その、ほどよい狭さ（けっして狭くはなくて、あくまでN-BOXと比べて）と閉塞感が心地よいのです。

シートも座り心地が良く、思わず倒して寝そべってしまいたくなります。そのイメージに家族は必要ありません。そして、軽自動車のなかで最もパワフルなエンジンを搭載しているのにかかわらず、あくまでプライベート空間で独りで好きな音楽を聞くと「楽しいだろーなー……」というライフスタイルが想像されます。

まるで海外TVドラマや映画に出てくる様な「ダイナースタイル」もいいし、シックな「セッションスタイル」も捨てがたい。クールなのも豪華なのも魅力だ。選ぶのは走ってナンボの車なのですが、ソファー選びか部屋のリフォームを考える気分になる、そんな不思議な車種がN-BOXスラッシュなのです。

もちろん、現実には休日に家族を乗せてショッピングや、たまのドライブ、平日は奥様の足として活躍することになります。そして、時々は駐車場で車内に閉じこもることができますが、長時間は許されないでしょう。