あなたはなぜ、ジャニーズタレント(芸能人)にならないのか?|平本淳也のジャニーズ社会学
前回までは「ジャニーズに入るための方法」をより具体的に、実践的に伝えてきた。そこで今回はあなたはなぜ芸能人にならないのか? なるためにはどうすればいいのか……そんなテーマで進めていきたいと思う。
テレビや映画のオーディション時に行われる面接でよくある質問に「志望の動機」がある。あなたは何故この番組に応募しましたか?というものだが、就活的に言うと「当社を選んだ理由」と同じで、それなりの動機を言葉にして伝える必要がある。とくに芸能界の場合は「直球勝負」が求められる。
なぜ芸能人になりたいのか?と尋ねられたり、あるいは「応募書類」にこれを記すと意外と合格(通過)しやすいというのが、「有名になりたい!モテたい!金持ちになりたい!」の3つである。単純明快でわかりやすくてとても素直な印象で伝えられる言葉の代表だろう。つまり「どれだけ直球」で「素直」なのかを問いたいのが制作側の捉え方だ。「私の歌で世界を幸せにしたい」とか、「自分の演技で世の中を感動させたい」とか、そういう格好つけたメンドクサイ者はいらない。ただ素直に「何故か?」をストレートに答えられる者が使われる世界である。
要するに性と金で、人間が持つ欲の単純なところではあるが、これこそ芸能人に必要な「表現」のチカラの見せ所にも繋がり、歌手としても俳優としても成功する例が多くある。自分自身を適当に飾り建てると「それ、本音?」と突っ込まれるし、僕は萩本欽一さんからも「本心で自分を表現できない子はいらない」と教えられた。
実際にメジャーの舞台でタレントとしてデビューすれば、「有名になれて、モテて、金持ちにもなれる(かも)」の3つは概ね約束される。スキャンダルでどんなに嫌われても有名人となればやはり世間での待遇も格段と違ってくる。繁華街のお店に入れば、「これはお店からです」と頼んでもいないメニューが追加されたり、飲食代そのものが無料となったり、最近ではSNSに載せてくれたらお礼に無料するという店の申し出も少なくない。有名人って得だなとまず最初に思うのが環境の変化だ。
こんななにかとお得な特権を持ちながら、そのうえ高収入でセレブになれるなら芸能人は憧れの職業でありつつけると思いきや、最近では「ユーチューバー」に将来なりたい職業の座を奪われているのが時代の流れを感じさせる。芸能人=稼げるという印象は誰もが抱くが、それを証明するように被災地へのお見舞いにしても数百万円からの寄付は珍しくはなく、バラエティ番組ではギャラや貯金にまつわるエピソードでも注目されるのは桁違いの収入だ。最近ではV6の岡田准一が5億円の大豪邸を建設中と報じられたり、何やら大金を稼げそうな雰囲気ばかりは伝わってくる。
■芸能人はいったいどれくらい稼げるのだろうか?
では、芸能人はどれだけ稼げるのか? プロ野球選手のように契約金や年俸(推定)が報じられるわけでもなく、価格表のような一覧があるわけでもない。副業もアルバイトもし放題なので、こればかりはマネジメントする事務所側も正確なことはわかっていない。いわゆる水商売の最高峰が芸能界なので、金銭価値が発生する労働の対価となる業務に伴って得られるのがギャランティになる。
芸能人の場合は、行動の全てが有償ということでもなく、プロモーション活動(販促)においては無償がほとんどで、交通費などは自腹のケースも少なくない。メジャーのステージに立てたといえどもメディアへの露出がないと、いわゆる”芸能人”としては認められないし、また自らも自覚できなかったりするが、やはり日本ではテレビに出ているかどうかで扱いが大きく変わる。
欧米では、俳優は「テレビ<映画」、モデルは「テレビ<ショー」、歌手も「テレビ<ステージ」という図式が成り立っているが、日本は何よりもテレビが活躍の象徴だ。つまりテレビに出ていれば売れている、出てないと売れていないという印象になるが、そのテレビの出演ギャラは意外に少ないのが実情だ。
特に俳優や音楽系の歌手の場合は、テレビを広報の場として活用しているのが実情で、テレビ出演することで自身の活動や関連する商品をPRの場に過ぎない。音楽番組やバラエティ番組でのゲストトークなどはその代表例だ。本業(CDやドラマ・映画)の宣伝が主たる理由だから特にギャラは発生しないが、いわゆる「テレビタレント」は事情が異なり、当然ギャラが命になる。
出演するだけで儲かるという単純な計算にはならないが、バラエティなどではその種のタレントや芸人らはテレビがないと生きていけないわけで、そのギャラは数万円から高くても30万円という相場になっている。ひな壇芸人は請求書ベースで10万円以下が妥当(諸雑費込み)が予算の範囲だ。
特に最近のバラエティは「質より量」の傾向が高く、賑やかに楽しそうな場面を構成させるためにやたらに多くのタレントを導入する。要するに単価が高いか安いかである。作り方としては安くて多いほうがバラエティとしては向いているし、穴埋めやネタも上がりやすいので便利でもある。
もっとも番組のあり方次第の話だが、本人の取り分が1本3万円としても週一レギュラーなら12~15万円が番組一本で入るし、不定期な出演と営業やイベントも合わさって週に5本程度なら収入も50万円を超えてくるので、タレントとしても恥ずかしくない生活は送れるだろう。
一方、同じテレビでも冠やMCともなれば年間契約で億単位は下回らないのが最近の相場だ。最も稼いできたのはタモリさんやみのもんたさんでレギュラー1本が300万円から特番では500万円以上の収入を得ていた時代もあったが、最近では予算も抑えられ、最高レベルの中居正広で1本300万円といったところだ。
局アナが独立したり移籍したりと会社員から転身する場面も多いが、会社員とタレントでは収入も10倍は違ってくるのでテレビ局所属の社員だとしても人気者はフリー転身を誰でも一度は考えるところだ。そういった意味でも芸能界はその欲望を掻き立てられる世界ではあるが、不安定な世界でもあるので最高月収5000万円でも今月は5000円という一発屋芸人のような話がリアルにある。
しかし一般人において一度でも数百万円から数千万円、下手したら億単位の報酬が短期間で得られるなんて経験はまずあり得ない。一度でも夢が見られるのなら十分だとも思えるが、知り合いの元プロ野球選手は契約金でもらった5000万円はすぐになくなり、年俸でもらった数百万円は生活費で消え、解雇されたときには貯金もゼロですぐに勤め先を探したそうだ。
契約金の5000万円もの大金、今となっては何に使ったかさえ覚えておらず、資産的にも全く残っていない様子だった。有吉弘行くんが言っていたが、売れるとか売れないとか関係なく、「生活」を変えなければ何も変わらないし怖くもないというのは素晴らしいスタンスだ。浮かれてると足も身も掬われて弾けてしまうから、背丈・身分にあった姿勢を忘れないようにという教訓にもなる。
■SNSが発展した時代でもテレビでの露出が大きく有利に?
ただ今の時代はそんなに困ることもないはずだ。仕事の幅も広ければメディアも多角でテレビだけが活動の場ではなくニコ生やAbemaTVなどインターネットテレビだけで月に数百万円を稼ぐタレントも少なくないし、SNSの活用で自身のCMも楽に行えるので例え干されても忘れられることはほとんどない。
便利な世の中になったが、まず有名になるためにはやはりテレビに出て名前を売らないとならないのは言うまでもない。とにかく一発でも一曲でも1話でもそこそこ当てておけば何とか生きていける環境は手に入るのも一般とは異なる考え方だ。業界の仕事は基本的に「待ち」になるので下手に攻められないが、業界外での攻めはなかなか効果的で多くのタレントが裕福になっている。
また、なかには「パーティー」だけで生きているタレントも多い。自分の誕生会からただの飲み会まで何かと楽しめる場所を主催する。タレント仲間を呼んだり、催し物を挿入したりと業界では毎日誰れがどこかで必ずやっているポピュラーなものだが、参加費として会費が5000円~1万円程度で100人規模の集まりになり、収入の30%程度は主催の利益になっている。これを週一で行えば、パーティーだけでも月収100万円からになるというものだ。
テレビに出ていなくても、ある程度有名になってしまえばこの程度の副業は誰にでも容易にできるのが芸能人であり、そばで見ていると上手くやっているなぁとと常々思う次第だ。副業で店を持ったり、会社を興したりとそういった話題も多いが芸能人には、こういった別の「芸」も備わると生きていく分には利益が盛んに訪れていく。
ちなみに、この夜な夜な開催されている業界系のパーティーには主催を中心にあらゆる方面から様々な方が参加しているが、こういった場での出会いに要注意だ。色恋系から薬物系のニュースに繋がる発端がここにある。いわば良しも悪しもスキャンダルの温床である。あまりにも素直で良い子だと狙われやすくもなるが、ターゲットにされるのも芸能人特有だろう。
著者プロフィール
ジャニーズ出身の作家
平本淳也(ひらもと・じゅんや)
ジャニーズ出身の作家で実業家。著書34冊のベストセラーを誇る売れっ子の物書きとして、テレビや雑誌など多くのメディアに記事やコメント提供。実業家としてはコンサルティング会社や芸能プロダクション、レコード会社などを運営し、タレントから起業家まで幅広い活動の支援を行っている。http://vjsv.com/