水を売る?夏限定、江戸時代のおもしろ商売「冷や水売り」を詳しく解説 (2/2ページ)

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歌川国貞「當盛六花撰 紫陽花(部分)」ボストン美術館蔵

この浮世絵では男性の手に「白玉入り冷や水」が見え、白玉といっても白いものだけではなく、紅で色づけされているものも入っています。他の浮世絵でも赤や黄に彩られた白玉が見られ、とてもカラフルで涼やか。ただの甘い水よりも飲みたくなります。

ちなみに京都や大坂にも同じように冷や水売りがいましたが、白玉入りは江戸だけだったそう。なんだか江戸だけちょっとお得感があります。入っているのは基本的には白玉ですが、たまに葛入りや、上品な甘みの道明寺製の干し飯(ほしいい)入りの冷や水も売られたそう。どれもするりとのどを通るので、食欲のない夏にはぴったりですね。

これはさぞや江戸っ子たちも冷や水売りに助けられたことだろう・・・と思いきや、江戸時代に氷などないものだから、井戸から汲みたてこそ冷たいものの、炎天下を売り歩くうちにしだいにぬるま湯になってしまったようで、こんな川柳が残されています。

「ぬるま湯を 辻々で売る 暑いこと」

たとえぬるま湯でも「ぬるま、ぬるま」の呼び声ではお客さんも来ませんので、「ひゃっこい、ひゃっこい」と言って売っていました。そのまま売る方も太い奴ですが、買う方も粋な江戸っ子ですから、一口飲んで「おい、べらぼうめえ、ぬるいじゃねえかヨ!」なんて文句を言う野暮は居らず、黙って涼しいふりしてそのぬるま湯を飲み干したのでしょう。だからこそ、こういう諧謔的な川柳ができたのではないでしょうか。

また、当時は砂糖は高級品。原価が高くて割に合わないというので、砂糖以外の安価な甘味(水あめなど)でごまかしている冷や水売りもいたらしく、こんな川柳も残っています。

「水売りの 砂糖何だか 知れぬなり」

現代でも、食品の原材料のごまかしが稀に発覚したりしますが、当時の江戸っ子たちも、けっこう怪しいことをしちゃっていたようですね!現代なら大問題に発展しますが、江戸時代では川柳になるくらいで済んだというのが、当時は寛大だったんだなあと江戸のおもしろみを感じさせてくれます。

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