中国初のクライオニクスが行われる。49歳女性の遺体が人体冷凍保存へ
クライオニクス(人体冷凍保存)とは、いつの日かよみがえらせることができるという希望をもって、亡くなったばかりの遺体(あるいは心肺停止ほやほやの脳だけ)を極低温で冷凍させて保存することを言う。
真剣な科学探究のテーマであると同時に、SFによく登場することから、疑似科学、都市伝説とも言われている。
バットマンのミスター・フリーズといったフィクションや、ウォルト・ディズニーの遺体が冷凍保存されている(嘘)といった話は、クライオニクスの分野に本当とも嘘ともつかない好奇的な影を落としている。
昨年イギリスで14歳の少女に未成年初となる人体冷凍保存が施された。
そしてこのほど中国で初となる遺体冷凍保存例が登場した。展文蓮(49)は肺ガンで亡くなったが、夫が冷凍保存処置のためにその亡骸を提供した。
・液体窒素の中に遺体を安置
この夫婦はかねてから、社会に還元できる科学のために献体しようと決めていたという。夫によると、生命を保存するプロジェクトとして冷凍保存の考えを最初に説明されたという。
展文蓮の遺体は、山東省済南の銀豊生命科学研究院で処置され、2000リットルの液体窒素の中にうつぶせに安置されている。
このプロジェクトは、銀豊生命科学研究院と山東大学斉魯病院が、アメリカの非営利団体、アルコー延命財団のコンサルタントと共同で行っている。

・人体冷凍保存は可能なのか?
こうした処置に対して多くが抱く信念はわかるが、疑問も残る。このようなプロジェクトは科学的に本当に実現可能なことなのだろうか?
これは、ヒト生物学をより理解するための単なる実験ではないのか? それとも、人体冷凍保存は将来的に可能な選択肢になるのだろうか?
冷凍保存は、タイミングがすべてだ。心臓が止まったらすみやかに遺体を凍らせなくてはならない。なので本当は冷凍という言葉は、この場合ふさわしくないかもしれない。人体冷凍保存は、実際は遺体の組織細胞にダメージを与える氷晶ができるのを厳密に避けるための処置だからだ。
単なる冷凍ではなく急冷凍というのが、正確な言い方かもしれない。

遺体を腐敗させず、長期間低温で保存してもダメージを与えないために通常使われるものは、グリセリンやプロピレングリコールのような保存用化学混合物に不凍剤を加えたものだが、そこで終わらず、死は終わりではないという真逆の考えに対応するために、遺体は特別なケアを施される。
・新たな技術に望みをかけて
冷凍保存の目的は、いつの日か遺体を解凍して、細胞レベルで生き返らせることだ。しかもできれば、遺伝子が原因ではない後成的な変化があまりないことが望ましい。
もっと進んだ新しい技術が出てくれば、冷凍保存した遺体を生き返らせることも可能になってくるかもしれない。だが現在の知識と技術では、死を完全にひっくり返すことは不可能だ。
死からの復活に一番近い体験は、心臓細動除去などによって患者が臨床的な死から息を吹き返すケースだ。
人体冷凍保存は、極めて短い間に最大限の効果が出るタイミングを狙って行われるが、死はとらえどころのないグレイゾーンだという信念の中で機能する。決定的に明確な出来事というより、ひとつの過程なのだ。

わたしたちがまだ死者をよみがえらせるのに成功していないからといって、それは冷凍保存分野が不必要かつ重要ではないという意味ではない。
この中国のケースは、冷凍保存分野を研究している人すべて、そしてそうした進歩の恩恵を受けたいと思っている人たちにとってひとつの前進といえる。
今すぐには死をひっくり返すことはまだできないかもしれないが、このような一見突拍子もない科学が進歩して、こうした技術が実現するかもしれないと想像するのは、あんがい不可能なことではないかもしれない。
つい最近も、脳と体を人工冬眠状態で保存できることが証明された。(人体冷凍保存技術がまた一歩前進。脳と人体を人工冬眠状態で保存できることを証明)
わたしたちが生きている間に実現するかどうかはわからないが、不老不死に貪欲な人類の飽くなき探求心が、不可能を可能にする日も来るのかもしれない。
via:mirror / sciencealert/ translated by konohazuku / edited by parumo