ウルトラマンが悪役に?中国政府が偽特撮ヒーロー映画を支援するワケ (2/2ページ)
実はこの作品のウルトラマンは、日本に核攻撃を行った悪の組織と密接に関係しており、中国を支配しようと企む悪役です。映画のクライマックス、悪のウルトラマンは中国製のロボット部隊に倒されるのですが、これは日本が秘密裏に核兵器を保有しているという中国の陰謀論を意味したもので、ロボット部隊は中国こそが世界の平和を守る正義の国家という意味です。
つまり、「中国共産党政府が統治している国が幸せ」という、建国記念日をテーマにした物語なのです。ちなみに映画内のウルトラマンのデザインは、藍弧動画側は「細マッチョにリファインした」とアピールしていますが、実際は顎が突き出た醜悪なもので、ロボット部隊のデザインは日米が共同制作したアニメ「トランスフォーマー」の露骨な模倣です。
大半の中国国民は自国の体制が良いものではないと思っています。そこで中共政府は人気キャラを利用してプロパガンダ映画を制作し、自国民を洗脳して意識を変えようとしているのです。偽ウルトラマン映画に対しては、
「子供の頃に観たウルトラマンのイメージが崩れた。ショックだ!」
「日本側の著作権許諾を取ってないみたい。中国の恥です」
「無許諾でキャラクターを改造するなんて、恥ずかしい行為だ」
「ダサい!特に社会主義礼賛の部分がキモい!」
「日本の円谷プロが訴え続けても、ガン無視して上映するなんて!さすが破廉恥な国だ!」
「哲学のようなセリフが多く使われていますが、どれも子供だましにすぎません」
「著作権侵害を愛国の名義で取り消さない」
と、当然のように批判が殺到しました。
しかし、その一方、
「我が国に、ようやくクオリティーの高い3D映画が誕生した。売国奴は必ず祖国を無闇に批判する」
「日本側の著作権所有者がキレた。ハハハ!嬉しい!祖国が強いぜ!」
などと、歪んだナショナリズムに基づいた賞賛の声も寄せられました。
2009年、中国の企業で働いていた僕が仕事の都合ではじめて日本に出張した時、当時12歳だった甥に「僕もウルトラマンの故郷(日本)に行きたい!おじさん、今度日本を案内してよ!」とせがまれました。
このようにウルトラマンは中国で根強い人気を誇るキャラです。日本が生んだ偉大な正義のヒーローに対し、中共政府はプロパガンダのために著作権を侵害しイメージを踏みにじりましたが、皮肉にもその行為により中共政府の卑劣さ、日本とどのような関係を持つべきかを、多くの中国国民が理解したと思います。
著者プロフィール

漫画家
孫向文
中華人民共和国浙江省杭州出身、漢族の33歳。20代半ばで中国の漫画賞を受賞し、プロ漫画家に。その傍ら、独学で日本語を学び、日本の某漫画誌の新人賞も受賞する。新刊書籍『中国が絶対に日本に勝てない理由』(扶桑社)が発売中。