ファンタジックと鬱展開!宮沢賢治の名作童話「オツベルと象」は大人になって読むとまた違った奥深さ (2/4ページ)
一方で、象が疲労感や苦痛を訴える時に『サンタマリア』つまり聖母マリアを意味する祈りを口にするなど、キリスト教的な用語が唐突に出るのも特色の一つと言えます。また、人語を話して助言を与える月は日本神話の月詠尊を始め、各国の神話に多く登場する神格で、このモチーフはどこか多神教的ですね。
日本人は様々な価値観や思想を織り交ぜるのが好きと言われますが、信仰に生きた賢治もその例外に漏れず、帰依していた仏教だけでなく様々な思想書や宗教書を読破した彼らしく、色々な宗教から来る世界観を見事に織り交ぜ、『オツベルと象』の世界を描いています。
ラストシーンの空白は何?『オツベルと象』を語るうえで欠かせないのが、ラストで『おや■、川へはいっちゃいけないったら』と言う箇所です。校本全集より前には『君』と直されたり、“おやめ”とするものもあり、定かではありません。
語り手が牛飼いであるため、牛が川遊びをして溺れそうになって慌てたと言う解釈もあれば、 『危険な川=三途の川』と言う連想で死にかけた白象へ向けた説、欲張って深みにはまり、最終的に成敗されて死んだオツベルを引き合いに出した説など、読者に解釈が委ねられる箇所でもあります。それもまた、全体を覆う宗教的な雰囲気と相まって謎を残していますね。
いかがでしたか?子供の頃に教科書や絵本で楽しんだこの名作も、大人になって読み直すとまた違った奥深さが味わえると思います。
