秋津壽男“どっち?”の健康学「犬や猫から感染する人獣共通感染症の恐怖。野生や海外の動物との接触には注意すべし」 (2/2ページ)

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 一方、猫のウイルスは人間にも伝染します。最も有名なのは「猫ひっかき病(=キャットスクラッチ)」という人獣共通感染症です。猫にひっかかれた場合、通常は時間とともに治りますが、猫に寄生しているノミの菌が毛づくろいの時に猫の爪に付着していると、それが人間に感染します。3~10日の潜伏期間があるため直後は症状も現れませんが、重篤化するといつまでも化膿が続きます。腕をひっかかれたにもかかわらずリンパ節が腫れることもあり、この場合は抗生物質を投与して治療します。

 また、予防接種をしていない野良猫にかまれた際、破傷風菌が体内に入る可能性もあります。こちらは重症になると全身の筋肉が麻痺して死に至ります。かまれたら、傷口が浅ければ食塩水で傷口を洗い、消毒して外科へ行ってください

 かまれずとも、猫にはトキソプラズマという寄生虫も存在します。飼い猫のトイレ掃除などで手に付着したオーシスト(猫の糞便に付着する接合子嚢)が人間の口に入って感染します。健康な人が感染しても症状が現れず、現れても軽い風邪で済みますが、幼児は重症化することもあります。

 犬から受けた傷は「ただの傷」で済むことがほとんどです。しかし、猫の場合は「感染症」の危険性があり、悪化して長引く可能性があるので、犬の何倍も危険です。特に野良猫にひっかかれたら、念のため病院で診てもらいましょう。

■プロフィール 秋津壽男(あきつ・としお) 1954年和歌山県生まれ。大阪大学工学部を卒業後、再び大学受験をして和歌山県立医科大学医学部に入学。卒業後、循環器内科に入局し、心臓カテーテル、ドップラー心エコーなどを学ぶ。その後、品川区戸越に秋津医院を開業。

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