小川未明「赤いろうそくと人魚」の元ネタは、悲しくも恐ろしい悲恋話だった

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小川未明「赤いろうそくと人魚」の元ネタは、悲しくも恐ろしい悲恋話だった

北国の海を舞台にしたお話というと、皆さんは何を思い浮かべるでしょうか?アンデルセンの『人魚姫』、もしくは小川未明の傑作『赤いろうそくと人魚』を挙げる方もいるかもしれません。本項では、『日本のアンデルセン』と称えられる小川未明が書き上げたこの悲しくも美しい童話に秘められた謎を解いていきます。

救いが無さすぎる…異界の少女が受けた過酷な運命!

教科書や絵本などでおなじみの方も多いため、『赤いろうそくと人魚』のあらすじは割愛しますが、人魚と人間の交流という点では人魚が陸の王子様に恋をした『人魚姫』と驚くほど共通しています。老夫婦と異界の娘が引き離されるという点では『竹取物語』(かぐや姫のお話)にも似通っていますが、このお話が両者と異なるのはヒロインの末路です。

『人魚姫』では姫の死に気付いた王子様は悲嘆し、人魚姫の家族が痛々しく苦悩する様子が描かれます。『竹取物語』でも、かぐや姫が月に帰った後のお爺さんは妻と共に泣き続けて病み伏せり、天子様(帝、御門)に至っては天皇としての日課にも差し障りが出る程に苦しみ、姫から贈られた不死の薬を焼かせるなど、いずれにしても周囲がヒロインの失踪を嘆く点では酷似しています。

しかし、人魚の娘は言葉巧みな商人に取り入られて醜い心に変わってしまったお爺さんとお婆さんによって、無慈悲にも売り飛ばされてしまうのです。その点は『人魚姫』『竹取物語』とは正反対に、どこか現実的な暗さと生臭さが伝わります。次は、その理由と思われる未明の体験談についてお話しましょう。

物語のモデルは、未明の地元に伝わる悲しくも恐ろしい悲恋話だった


人魚と蝋燭という、一見すれば奇妙な取り合わせですが、これには小川未明の地元である新潟県上越市に伝わる説話がモデルになっています。雁子浜という土地に住んでいる青年が常夜灯を神社に灯していると、佐渡島からそれを目当てに美女がきます。

許嫁がいるにも関わらず青年は美女と密会するようになるのですが、母が引き止めたために青年は献灯を怠け、結果として遭難した恋人は溺死します。それを後悔した青年は自害してしまい、地元民は二人を供養した塚を作りました。それが人魚伝説になり、未明の童話が書かれたのです。

如何でしたか?美しい悲話として親しんだ『赤いろうそくと人魚』も、元ネタを把握していると大人になってから読み直す時に味わい深くなることと思います。また、人魚という不幸さをもった異形の存在が描かれた背後には、“未明がお世話になった足の不自由な女性”や、戦前に横行していた人身売買などがあるとする説もあります。

これも子供や障害者への温かいまなざし、そうした弱者に対する偏見と虐待を許さなかった正義感の強さで知られる未明らしいエピソードとも言えますね。なお、『赤いろうそくと人魚』は青空文庫にて無料で読むことができますので、興味のある方はご一読をば。

赤い蝋燭と人魚 小川未明

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