玉木正之のスポーツ内憂内患「今も忘れない星野仙一さんが私に語った言葉」 (2/2ページ)
おれは、いずれは監督をやるつもりだったから、球界の先輩だけじゃなく、経済界やいろんな先輩の方々に、聞きたいことをぶつけただけ。自分の出世に利用しようといった下心があれば、すぐに見透かされるよ」
私自身、星野さんにはたくさんのことを教えていただいたが、一度だけ灰皿を投げつけられたこともあった。それは中日の監督になって4年目の春の沖縄キャンプでのこと。当時、週刊誌に何かと批判されてマスコミ不信に陥った彼は、一部の信頼しているマスコミ人しか相手にしなくなった。
それを、そんな度量の狭いことじゃダメだと、ホテルの監督室で諭したところが、星野さんは「ウルサイ!」と一喝し、目の前のテーブルの上の大きなクリスタルグラス製の灰皿を私めがけて投げつけた。
灰皿は私の身体を1メートル以上外れて壁を直撃。彼が本気で私を狙ったのでないことはすぐにわかった。そこで私は冷静に、「マスコミの記者を選別する基準はあるのですか?」と聞いた。すると──、
「これがお父さんの書いた原稿だ、と自分の息子に堂々と見せることのできるヤツとしか、俺は話をせん!」
この言葉を、私は今も座右の銘にしている。合掌。
玉木正之