生体細胞の組織をあっという間に3Dプリントで作成する新技術が開発される(オランダ研究)
人間の臓器を3Dプリントできるようになる日がまた一歩近づいたようだ。
これまでも、3Dプリンターで立体物を「印刷」する研究は進められていたが、オランダ、トゥウェンテ大学の研究チームが、人間の生体細胞を内部に収めた組織をプリントする超精密な技法を開発した。
・インエア・マイクロ流体工学を利用した多細胞性3D組織
「インエア・マイクロ流体工学」という新技法は、2つの流体を空中でジェット噴射する。ジェット噴射の一方は塩化カルシウムで、もう一方がアルギン酸塩という褐藻類の細胞壁を構成する物質だ。
それらが衝突すると、回転する基質に流れ込む。こうすることでプリント可能な素材に細胞を閉じ込めることができる。
そうして出来上がるのが、細胞内蔵チューブでできた多細胞性3D組織だ。言い換えると、構造化されたスポンジ状のヒドロゲルチューブに、ヒトの生体細胞がぎっしりと詰まった代物だ。
実際にプリントしている様子をリアルタイムで撮影した動画も公開されている。ご覧の通り、ろくろの上で陶芸でもやっているかのような雰囲気だ。
In-air microfluidics
・生体細胞を傷つけず数分で作成できる
大学の声明では、「この3Dモジュラー生体素材は、天然の組織によく似た内部構造を有している」と説明されている。
「多くの3Dプリント技術は熱や紫外線を利用したものだが、どちらも生体細胞に傷をつける。新開発されたマイクロ流体工学的アプローチは、患者の細胞素材を培養することで傷を負った組織を修復できるため、有望な組織工学的技法である」
この技法を用いることで、1マイクロメートル(0.001ミリ)未満しかない極小の雫を精密に制御できるようになる。以前なら、同じような技法で1立方センチを満たすには17時間を要したが、今回の技法ならものの数分でやってのける。

image credit:University of Twente
・将来的には人間の内臓を丸ごと印刷?
今のところ単なる学術上の試みに聞こえるかもしれないが、実はこれには素晴らしい可能性が秘められている。
2003年に米国で初めて3Dバイオプリント技術の特許が出願されたが、それは基本的にインクジェットプリンターを改造して、生体細胞を印刷するものだった。
だが、この分野はその後大きく進歩し、2015年には心臓模型の3Dプリントが可能であることが実証された。
将来的には、今回の技法を用いて、破損した組織を治療できるようになるかもしれない。まだまだ先の話だとはいえ、さらに技術が進めば、人間の内臓まで丸ごと印刷することだってできるだろう。
この研究は『Science Advances』で発表された。
References:utwente / scienceandtechnologyresearchnews/ written by hiroching / edited by parumo