吉永小百合の「過去・現在・未来」(1)駅の公衆トイレで着替えて… (2/2ページ)

アサ芸プラス

まだ接吻も知らない頃、台本にキスシーンがあり、自宅に帰って玄関でワーワー泣いたこともあった。結局、その監督は「この子にはやっぱり(キスシーンは)無理だ」と言って、やめることになる。

 私が思うに、小百合のピークと言っていいのは、まだ20歳前後だった「若い人」(62年)、「泥だらけの純情」(63年)、「光る海」(63年)あたりの頃(ちなみに後者2作品は、私の父が監督)。

 当時、共演した浜田光夫(74)とは「純愛コンビ」と銘打たれ、随分と話題になった。お互いが演技をしやすいピッタリの相手であり、二人が組み合わさると、シリアスなものから喜劇っぽいものまで、その相乗効果はすごかった。いい作品といい役に恵まれ、日活も力の入れようが違う。とにかく小百合を売ろうと懸命だった。だから小百合もどんどん成長していったのだ。そう、あの「事件」が起きるまでは‥‥。

 小百合は「愛と死の記録」(66年)で浜田と共演するはずだった。ところが──。

 酒好きの浜田が先輩俳優とロケ先で飲みに出かけた際のこと。その先輩が酔っ払いに絡まれ、電気スタンドで殴りかかられた。その時、電球の破片が浜田の眼球を直撃。病院に担ぎ込まれた浜田に、医師は「眼球摘出だ」と言う。浜田は当然、「いや、それだけは勘弁してほしい」と。

 小百合が病室に見舞いに訪れると、浜田の顔は包帯でぐるぐる巻き。想像を超える姿に、小百合は大きなショックを受けたのだ。

 浜田は「愛と死の記録」を降板。代役に起用されたのが渡哲也(76)だった。

 小百合は貴重な相棒を失った。浜田はその後、復帰したが、もう以前のようではなかった。本人曰く、

「目で訴えかける演技ができなくなった」 

中平まみ(作家)

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