サリンはいかにして撒かれたか 「オウム」を描いたバンド・デシネが手塚賞最終候補に (2/2ページ)

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一方、日本では「神から下った旋律」として教祖の麻原が口ずさんだ歌を『ビートルズの「イエスタデイ」じゃないか』と指摘した新入信者の男が、教祖の音楽的才能を疑った罰として信者らに洗脳教化され、教団の計画するサリン散布計画の実行部隊に仕立て上げられてしまう。

「395日前」からはじまり「188日前」「63日前」「9日前」「4日前」「1日前」。カウントダウンするように物語は進む。

サリンが本格的に製造され、その効果の実験として長野県松本市が選ばれる。松本は当時教団が道場用地の取得を巡って地元住民と争っていた場所である。犯行計画が練られ、実行部隊が選抜される。並行するように松本市民のごくごく平和な日常が描かれ、カウントは「0」になる。

そして、「松本サリン事件」から数えた「地下鉄サリン事件」へのカウントアップが始まる。「1日後」「2日後」「45日後」…教団は犯行の隠ぺいのために実行犯らの指紋を医療用メスで指の肉ごと深々と切り取る……。

これは事実を基にしてクリエイトした<物語>です。しかし、ドキュメンタリーだと受け止められることも全然問題ない。

LF・ボレ氏が語るように、作中の描写の多くは事件に関する資料から汲み上げた事実に即している。しかし、実行犯や犯行計画者、被害者、被害者の家族らの視点から事件を描くことで、その異様さや凶悪さが歳月を越え、あらためて生々しく感じられる。

第22回手塚治虫文化賞マンガ大賞(朝日新聞社主催)の最終候補にエントリーされているこの作品。読後感は爽快なものではないが、作中に垂れ込める不穏な雰囲気と教団の不気味な存在感がいつまでも胸に残る。
(新刊JP編集部)

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