プリオン病は脳に30年間潜伏し、時が来たら素早く襲撃をしかける(米研究)
プリオンは異常な折り畳み構造のプリオンタンパク質から成る感染性因子のことだ。脳の内部から攻撃し、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)などの様々な神経変性疾患を引き起こす。
最新の研究によって、このプリオンがさらに恐ろしい存在であることが明らかになった。30年間も身を潜めて、時が来たら素早く襲撃を仕掛けるのだ。
これは米疾病予防管理センター(CDC)による最新の知見だ。研究では、2015年になってCJDを発症した患者が見つかったが、なんとその人が最初に感染したのは1985年のことだったらしいのだ。
・30年、あるいはそれ以上潜伏するプリオン病
これはプリオン関連の疾病としては記録上最長の潜伏期間だ。しかしCDCや日本の大学病院によれば、さらに長い事例が判明する可能性があるという。
「潜伏期間が長期であるために、ヤコブ病に感染しながらも発症していない患者がいる可能性はあります。そうした人はヤコブ病が発症することなく亡くなる場合もあるでしょう」と自治医科大学の阿江竜介氏は話す。
「今のところ、潜伏期間は神のみぞ知るです」
・ヤコブ病の感染源となった移植用硬膜
プリオンの問題が明らかとなり、滅菌法が改善された1987年以前、汚染された移植用硬膜によって人にヤコブ病が感染したと言われている。
硬膜は丈夫な膜で、手術後の脳の治癒に使われるものだ。特に「ライオデュラ」という移植用硬膜は、プリオンタンパク質の感染禍を広めた汚染源として悪名が高い。

プリオンに感染した組織 image credit:wikimedia
こうした移植用硬膜が使用された時期は分かっているため、潜伏期間を推測することができる。研究では、2008年以降に日本で特定された硬膜に起因するヤコブ病22件ならびに1975年以降に特定された132件が調査された。
1983年から1987年にかけて、日本では毎年およそ2万人がライオデュラを移植された。また同時期、米国での件数はその5倍に上る。
1987年には汚染を防ぐためライオデュラの洗浄が行われたが、日本では1997年になるまで使用自体は禁止されなかった。したがって、今後も新たなヤコブ病の事例が判明する可能性はある。
厳格なドナースクリーニング、包括的な記録の保管、二次汚染の防止、有効であることが証明された滅菌法の適用などで問題に対応するには、さらに調査を進めてプリオン病の潜在的な数を特定する必要がある。

大腸菌(E. coli)細菌で培養されたプリオンタンパク質繊維 image credit: National Institutes of Health
・食人族のクールー病は潜伏期間が60年もあるケースが
プリオンが異常な折り畳み状態となると、正常なたんぱく質をプリオンそのものと同じ構造に変換しながら、少しずつ脳を蝕む。
これまで研究から明らかになった知見に基づき、研究者はアルツハイマー病やパーキンソン病のような病気にも汚染性のタンパク質が関与している可能性があると考えている。
パプアニューギニアで実施された食人族の研究によれば、やはりプリオンに起因するクールー病と呼ばれるヤコブ病に似た非常に珍しい病気は、潜伏期間が5、60年あった可能性もある。
しかし、この病気の場合、異常なプリオンの感染は移植用硬膜ではなく、死者の脳を食うという部族の習慣によるものだった。
ほとんどの人は食人など行わないだろうが、部族で確認されたクールー病の長期的な潜伏期間は、ヤコブ病などのプリオン病についても油断ならぬことを示唆している。こうした研究が進めば、治療を必要とする人がさらに発見されるかもしれない。
References:cdc / sciencealert/ written by hiroching / edited by parumo
追記(2018/3/22): 本文の一部を修正して再送します