腸の声を聞け。感情や気分、対人コミュニケーションまで腸が関与している可能性(米研究)
脳と腸に強い関連性があるとする研究結果は数多く報告されている。腸は脳の関与を受けずに機能する独自の神経系を持った臓器であり、腸からの信号が脳に大きな影響を及ぼしている。
例えば自分の今の気分や感情を理解しようとした時、まずは脳の働きについて考えるだろう。だがそれでは、大切なことが抜け落ちている。
腸だ。
腸と脳は神経でつながれており、腸から脳に送られた信号は、私たちの行動に大きな影響を与えている。
そればかりか、思考や推論、対人コミュニケーションすら腸が関与している可能性があるというのだ。
・腸が感情に関与する
「腸の感情の神経科学は大きな進歩を遂げました」と米フロリダ州立大学の神経学者リンダ・リナマン博士は話す。
基礎的なことはそう新しいものではない。専門家は1世紀以上も、消化器系の代謝・ホルモン・免疫の相互作用が、中央神経系の感情を司る部位に双方向の影響を与えているのではと疑ってきた。
何しろ英語で「直感」や「虫の知らせ」を意味する「gut reaction」や「gut feeling」は、私たちが感情を感じた時に湧き上がる内臓の感覚に由来するくらいだ。
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しかし具体的に両者がどのように関連しているのか証明することは難しかった。

・腸と脳をつなぐ迷走神経の役割
消化管の面積は皮膚の100倍も広く、神経系からの注目をたくさん要求する。これを行うために、人体内の内臓から内臓へと神経に沿って信号が行き来する。
迷走神経という神経シグナルの高速道路は、消化や心拍数、ホルモン反応や免疫機能までの一切を監視している。
この内部の連絡網で数多くの会話が交わされていることが明白である一方、腸が与える人の意思決定への影響の程度についてはまだ議論の途中だ。
・腸の迷走神経が脳にシグナルを出し行動を制御
リナマン博士らはこれまでの研究を渉猟し、迷走神経が行動に与える役割について現在までに判明したことをまとめた。
それによれば、消化管からのシグナルは報酬行動にブレーキをかけて、特定の状況を避けるような行動を強化することができるらしい。
これはほとんどの動物モデルに合致する。胃腸に入れた物からのフィードバックは確かに命を救う停止信号を構成しうるだろう。
「腸・脳経路は、ヒトからネズミまで、どの哺乳類でも非常に似通っています」と、リナマン博士は似たような腸の反応が私たちの行動を穏やかに導いていることを否定する理由はほとんどないことを示唆している。

・思考や対人コミュニケーションにも腸が関与している可能性
しかしネズミと違い、人間はもう少々脳が複雑で、脅威を評価する際の「推論」や「対人コミュニケーション」を行う能力があると考えられている。
もし腸が私たちの意思決定を左右するのなら、具体的にどこまでが腸の影響でどこからが認知の影響なのか突き止めることは重要だ。
最近では、腸内細菌叢が健康や精神衛生に直接影響することが明らかになっている。それらはパーキンソン病や自閉症といった神経症状の引き金となる可能性がありそうなばかりか、その構成が感情状態や認知状態までをも弄ぶ可能性すらある。
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「証拠によれば、プロバイオティクスを食べるなど、食事を変えれば、気分や行動にインパクトがあることが分かっています。」
「しかしその仕組みや、エサを与えた腸内の細菌叢が関与しているのかどうか、細菌が迷走神経を通じて脳に返信する仕組みといったことは分かっていません。こうした分野の研究はここ数年で爆発的に増加しました」

・腸と脳の関係について更なる研究を呼びかけ
今回のレビューは、革新的な発見というよりは、腸と脳の関係についてより詳細な研究を呼びかけるものである。
優れたモデルがあれば、様々な心理学的・神経学的条件を扱う方法も考案されるだろう。おそらくそれは管理された食事で細菌叢を標的としたり、薬で迷走神経を刺激したりといったものだ。
私たちの自由に思考し、評価したり批判したり推論を行なっているが、果たしてそれは腸の声によるものではないのか?科学者は今、それを突き止めようとしている。
研究は『Physiology』に掲載された。
References:fsu.edu/ written by hiroching / edited by parumo