日本の「ヤクルトレディ」が海外から注目を集めた理由とは? 未来を創造する企業の条件 (2/2ページ)
そこで、企業は二つ目の「社外のレジリエンス」についても考えていく必要が出てきた。
これは内側と外側を隔てる垣根を取り払い、企業がその一員である地域社会や広範なサプライチェーンにも目を向けていくということだ。
著者は、その例として日本の「ヤクルトレディ」を取り挙げている。
2012年のことだ。埼玉県で75歳の老女がなくなっているのが見つかった。傍らにいたのはやせ衰えた45歳の精神障害を抱えた息子。この地域を担当するヤクルトレディは、新聞が溜まっていることに気づき、異変を察知した。そのおかげで息子の命は救われたという。
日本のみならず先進国においては近隣住民同士のコミュニケーションは希薄になっている。ヤクルトのビジネスモデルや理念は「社外のレジリエンス」を体現している一例だと言える。
◇
企業は事業展開していない地域からも影響を受けている。そこで必要になってくるのが「社会全体のレジリエンス」という視座だ。
急激な環境変化、格差の拡大、貧困などの深刻な問題は、今、事業展開している地域では表面化していなくても、将来的に企業の発展や従業員の妨げになる可能性がある。グローバル企業は、大きな影響力と実践力を備えており、こうした諸問題に立ち向かうための独自の役目を担える。
子どもの権利の保護のために活動しているNGO「セーブ・ザ・チルドレン」は、世界的コンサルティング会社である、BCG(ボストン・コンサルティング・グループ)との協力体制を築いている。
同事務局長は「BDGの洞察力、プロセスのエンジニアリングや変革マネジメントは、子どもたちの生活を向上させる取り組みを前進させる支えになっている」と語る。このような「社会全体のレジリエンス」を高める取り組みを担う企業は増えつつあるようだ。
◇
本書で紹介される数々の企業事例は、最終的に社会全体という枠組みに考察が進んでいくが、その中には自社やチームが発展するヒントも得られるはずだ。また、誰しも、社会の中に生きている個人なのだから、一人一人が未来について考えるためには有益な一冊だと言えるだろう。
(ライター/大村佑介)