時効は2年!「過去の残業代」を取り戻すためにやること

まいじつ

msv / PIXTA(ピクスタ)
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安倍晋三政権が今国会の最重要法案と位置付ける『働き方改革関連法案』だが、6月20日の会期末までの成立は日程的にもギリギリの状況だ。もし、成立すれば、サラリーマンの残業が規制される喜ばしい面がある一方で、残業代の減収による年収減も起こるかもしれない。

さて、国の法整備とは関係なく、労働組合のない中小企業やベンチャー企業のなかにはすでに、残業時間(残業代)の上限を決めたり、サービス残業を強いる会社が少なからずある。社長のワンマン経営の場合、上司に相談しても無駄かもしれない。転職を考えるにしても、これまでの未払い残業代は取り戻したいものだ。そんなときはどうしたらいいのだろうか。

労働問題に詳しい東京都内の弁護士はこう話す。

「未払い賃金の請求権は2年で時効消滅するため、過去2年分に限り請求することが可能です。労働基準監督署に相談(申告)した場合、労働基準監督署は事情に応じて会社に対し指導あるいは是正勧告を行うことがありますが、行政指導であるため支払いを強制させることはできません。なお労基署は、労基法違反をしている会社(使用者)に対し勧告等をしても改善が見られない場合、告発することが可能です」

では、未払い残業代を請求するにあたって、労働者がすべきことは何か。残業代を請求する場合の一般的な流れは次の通り。

客観的な証拠集め 容証明郵便で請求 労働審判の申し立て 訴訟の提起

いきなり会社に請求しても、会社側はさまざまな理由をつけて拒否してくるだろう。そのときに備えて客観的な証拠を集めておくことが重要だ。

証拠としては具体的に、就業規則、雇用契約書、タイムカードのコピー、給与明細書などは最低限必要となる。会社を辞めてしまったあとでは入手しづらいものもあるので、辞める前に揃えておいた方がいい。残業をしていたという証拠としては、会社のPCでのメール送信記録も有効だ。

証拠を揃えたら会社と交渉

「集めた証拠をもとに会社と交渉します。『提出日時・名前』『雇用条件』『実際に残業した時間』『支払われるべき金額と支払われた金額の差額』『回答方法・期限』などを書いた要求書を作成します。会社との交渉経過の記録も残しておきましょう。交渉が決裂した場合は、弁護士に相談して内容証明郵便にて『通知書』を送ってもらい、請求を続けます」(前出・弁護士)

請求し続けてもダメな場合、裁判に訴えたいところだが、その前にまだ方策はある。通常の裁判より手軽な『労働審判手続』だ。

「労働審判では、裁判官である労働審判官1名と労働関係に関する専門知識・経験を持つ労働審判員2名とで組織する労働審判委員会が審理します。3回以内の期日で審理を行い、迅速な解決を図る手続きです。訴訟はどちらの主張が正しいが白黒つけるのが中心になりますが、労働審判は事案に則した柔軟な解決を図ることが可能となっています。審判は、裁判上の和解と同一の効力を有します」(同・弁護士)

このほか、残業代の支払いを促す方法としては、紛争調整委員会に対し、あっせんの申し立てを行うこともできる。同あっせんは無料で、手続きも訴訟に比べて迅速であるというメリットがあるものの、双方が同意しないと不成立になる。

転職・退職するにしても、泣き寝入りはいけない。サラリーマンの意識が変わらなければ、いくら国が法整備をしても、実行性の伴ったものとはならない。

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