世紀の茶番劇 米朝首脳会談「決裂」全シナリオ (2/2ページ)
ですから北は、年末までの時間稼ぎをしたいのです。北の機関紙『労働新聞』も《米国の誘惑と軍事的恐喝によって銃床を下ろすことが、どれほど残酷な結果を招くかはイラクとリビアの悲劇的現実が物語る》と報じている。これは、中国が主導した6カ国協議で、朝鮮半島の非核化と平和構築について明文化した'05年9月の共同声明に盛り込まれた《約束対約束、行動対行動で段階的な非核化に進み、これを履行すれば核廃棄は実現可能》という部分を持ち出し、日米韓もこれに同意していたではないかというメッセージに他なりません。これに対して米国は、いきなりのCVIDの実行、IAEA(国際原子力機関)の査察受け入れを要求するものと思われます。これを北が突っぱねれば、たちまち交渉決裂となり、トランプ大統領がカッとなって『軍事行動だ』と言い出す可能性も出てくる。そこまでいかなくても、米海空軍を使って海上封鎖を実施するくらいのことはやるでしょう」(アナリスト)
駐豪大使に指名されていた日系人初のハリス太平洋軍司令官が急きょ、駐韓大使に起用される見通しになったのも不気味だ。「米軍はいつでも動ける」という北へのプレッシャーとも受け取れるからだ。
とはいえ、トランプ大統領の頭の中は11月に行われる中間選挙でいっぱいであることも確か。しかも、切り札の一つだった空爆カードを“世紀の南北会談”で取り上げられ、目算が狂ってしまった。だから、どうしても非核化を実現し、自分たちの功績としたい。
「その非核化の落としどころですが、即時核廃棄や即時NPT(核兵器不拡散条約)復帰、IAEAの査察受け入れというところまではいかないのではないか。トランプ大統領が北の段階的廃棄を渋った場合、正恩委員長は保管している核兵器を『10年先の破棄を約束する』と言い出すかもしれません。鬼も笑う話ですが、今年11月に中間選挙を控えているトランプ大統領は、北側の譲歩として評価し、受け入れるかもしれない。つまり正恩委員長は“非核化を約束するフリ”をし、アメリカはこれを“前進”と評価するという茶番劇となる可能性が高い。また、アメリカ・ファーストですから、まず自国にICBMを向けないことを条件にすることも考えられます。これは南北会談に先立ち訪朝したポンペオCIA長官(現国務長官)が『北朝鮮のレジームチェンジは考えていない』『米国に到達し得るICBMと、そうでない中短距離ミサイルの取り扱いを区別する』と示唆したことからも十分考えられます。こんな米国と南北による“猿芝居”が行われれば、頭を抱えるのは日本だけとなるのです。すでにノドンは日韓を射程内に捉えていますが、一方の当事者の韓国は将来の南北再統一という長期的視点から見て、日本に向けられているノドンはどうでもいいのですから」(軍事ジャーナリスト)
歴史上初めてとなる米朝首脳会談の後、世界に向けてアナウンスされるのは、「どちらの側も勝利した」という予定調和の結末だ。