「淑女の黒歴史手帖」 第一回 地球のお魚ぽんちゃんの黒歴史

OL、モデル、作家……さまざまな分野で活躍する魅力的な淑女たちの黒歴史に迫る連載企画「淑女の黒歴史手帖」。記念すべき第一回は Twitter で大人気の 漫画家・地球のお魚ぽんちゃんが登場する。

Twitter のフォロワー10 万人超え、漫画『男子高校生とふれあう方法』が大人気の漫画家・地球のお魚ぽんちゃん(以下、ぽんちゃん)。
男子高校生への強烈かつ、異常な愛情が注ぎ込まれた作品や、奇想天外すぎる人々が繰り広げるカオスな4コマ作品は一度見たら忘れることができないインパクトがある。
シ ュールな世界感を表現しながら、多くの読者に支持され続ける秘密はどこにあるのか。
この“淑女”の原点、作品の魅力に迫る。
-目次-
一頁、エロの自給自足
二頁、マックシェイクでセックスアピール
三頁、ナルシスト期
四頁、女子バスケ部に屈しない姿勢
五頁、後輩ギャルに屈した過去
六頁、“リアタイ”で虚言
七頁、「家だと関西弁」という嘘
八頁、○○に改名したい
—今日はよろしくお願いします。大人気の漫画『男子高校生とふれあう方法』拝見しました。まずお聞きしたいのですが、ぽんちゃんは昔から男子高校生がお好きなんですか。
ぽんちゃん : いや、昔は全然。自分が高校生のときは普通に年上、スーツのサラリーマンの方がかっこいいと思っていました。でも、大学卒業後のある朝、電車にかわいい男子高校生が乗っているのを見て、雷に打たれたような衝撃が走って。
—出会ったんですね。
ぽんちゃん : 「こんなかわいい子がいたのか」って。最初はその子をだけをかわいいと思ってたんだけど、その子を見ているうちにいろんな男子高校生を「いいなぁ」と思い始めて。
●一頁、エロの自給自足
ぽんちゃんが高校時代に描いたエロい絵
—そういうきっかけからなんですね。ぽんちゃんの男子高校生への愛情は、いい意味でめちゃくちゃ異端ですが、普段の恋愛もそういう傾向があると?
ぽんちゃん : まともな恋愛みたいなものもしたことはあります。だけど、基本的に自分の中に「童貞の血」みたいなものが流れているんですよね。
—「童貞の血」。
ぽんちゃん : 昔から、エロへの情熱が強くて、それを消化しきれず未だに引きずっているんです。
—なるほど。具体的にはいつ頃から、その「血」が行動に出始めたんですか。
ぽんちゃん : 小学校低学年くらいからよくエロい絵を描いていましたね。親の前でも平気で描いていて。ただ、来客があるとさすがにまずいというのはあったので、親に「これ(エロい絵)、描いちゃったから隠してくれない?」ってお願いしていました。
—ちなみに、小学校低学年のエロってどんな感じですか?
ぽんちゃん : 私、生まれながらに多分ローションみたいなものにすごく興味があって。
—生まれながらに。
ぽんちゃん : 何がきっかけかはわからないんですけど、昔からお姫様とかが、蜂蜜とかローションみたいなドロドロした液体に巻き込まれて悶える……みたいなシチュエーションにすごくエクスタシーを感じるんです。両手首を縛られている裸の女の子に蜂蜜がかかっていて、上下から刃物が迫ってきている……みたいな絵を書いていました。
—ギンギンに尖ってますね。
ぽんちゃん : やっぱり、幼い頃は自分でエロを自給自足しなきゃいけないじゃないですか。
—エロを自給自足。今日、パワーワード祭りですね。確かに、小学生だと身近にエロいものってなかなかないですもんね。
ぽんちゃん : 当時はまだ、パソコンも気軽には使えなくて。パソコンでエロい絵を見るにもウイルスとか検索履歴とかをすごく警戒していました。どうしてもエロい画像が見たかった時に、「おっぱい」で検索すると検索履歴残っちゃうから、「どうやったらおっぱいが出てくるかな」と考えて。「おっ」って検索窓に入力して、おっぱいが出てくるまで4時間ぐらい探したけど、出てこなかったですね……。
—4時間…。強い思いが伝わってきます。
●二頁、マックシェイクでセックスアピール
「裏ピ」をさらに回転させたピースで身を乗り出すぽんちゃん
—確かにちょっといわゆる童貞っぽさを感じますが、ぽんちゃん美人だし、その好奇心だと、思春期は恋愛ばっかりしていた……とかあったんじゃないですか。
ぽんちゃん : いや、それが全然。好きな相手ができても積極的にいくってことはなかったです。そのぶん、アピールが“裏口から”になるというか。
—裏口と言うと?
ぽんちゃん : 高校生のとき、グループでマックとか行くじゃないですか。私、あまり甘いもの好きじゃなくて、普段絶対シェイクとか飲まないんだけど、そのときグループに好きな男の子がいて、あえてバニラのシェイク買って。ちょっと垂らしながら……口をべちゃべちゃさせながらドロドロを飲む……みたいなことはしていましたね。
—強烈すぎる。
ぽんちゃん : やっぱり「ドロドロしたものがどうしてもエロい」っていう意識があるんですよ。今思えば、相手は引いてたんだろうなぁ。
—やっぱ、昔から性的志向はちょっと変わっていたんですね。
ぽんちゃん : 100円でお手頃だし、めっちゃエロいと思ったんですけど。
—「甘いもの苦手だけど、マックシェイクを頼んで、スイーツ好きな女子らしさをアピール」……みたいな方が、まあ世の中一般的なモテではあるかな、と思うのですが、ぽんちゃんの場合は恋愛よりもエロの方が強く意味を持っているんですかね。
ぽんちゃん : まさしくそうですね。社会的には、本当は、ダメなんですけど……。やっぱり、男子高校生のことも、エロとか……そういう目で見てしまってるところがあって。現実の世界でそういうふうに男子高校生を見てはいけないから、こうやって作品を書いたり、DKOに自分を投影したりしているところはあるかもしれないです。
●三頁、ナルシスト期
世にも貴重な、ぽんちゃん中学時代のプリクラ
—エロだけでだいぶ話がもってしまいましたが、エロ以外だとどうでしょう。
ぽんちゃん : そうですね。好きな人に積極的に行けないと言いましたが、その反面、中学生くらいのとき、自分のことすごいかわいいと思ってた時期があって。
—いや、だって、美人ですもんね。
ぽんちゃん : いやいや。中学生の時とか、本当にやばいくらい芋くさい感じだったんですよ。変な位置でお団子して、ピンクのメガネかけてて。でも、電車でちょっと目が合った男性がいるだけで「多分私のこと好きだろうな」とか思ってたんです。それで隣に座ってみたりとかして、ちょっとウトウトしてみたりとか。
—まあでも、それはかわい気ありますよ。
ぽんちゃん : 電車で「かわいい」って単語とか聞こえると、「あれ、もしかして自分のこと?」みたいな。
—ああ(笑)。
ぽんちゃん : 当時は本当にすごくて、鏡見るたびに「ちょっとなんか興奮する」みたいな時があったんですよ。
—それは、「あ、今日いつもよりちょっとかわいいな」とかじゃなくて?
ぽんちゃん : いや、毎日等しく。親に対して「こんなにかわいい子を産んで大丈夫なのかな」とか思ったりしていました。
●四頁、女子バスケ部に屈しない姿勢
ぽんちゃん中学時代の学習ノートに突如出現する「DEATH」の文字
—それはすごいですね(笑)。学校生活に支障はなかったんですか?
ぽんちゃん : 自分に自信があった反面、行動には起こせなかったんですよね。自分のこと「かわいい」と思う気持ちと、本能的にそれを否定する気持ちみたいなものが同居していて、外では絶対言わなかったです。
—そういう冷静さはあったんですね。クラスではどんなキャラだったんですか?
ぽんちゃん : うーん。中学のとき煎茶道部だったんですよ。
—えっ。ぽんちゃんが?
ぽんちゃん : そうなんです。女バスとか女バレとか、強い女子のことを「怖いな」と思っていました。廊下で会って、挨拶とかするのがいやだから下向いて、気づいてないフリして歩いていました。
—大抵そういうの相手にバレてますけどね。
ぽんちゃん : あと、そういう「強さ」に屈しないぞ、とも思ってたんです。
—例えば?
ぽんちゃん : ある日、足を軽くひねった時に、ちょっと痛いくらいだったんだけど、病院に行って松葉杖を処方してもらったんですよ。
—松葉杖ってそんな感じで処方してもらえるんですね。
ぽんちゃん : そうそう。ほぼ痛くないのに、深刻な感じで「……どうですか、先生」とか言って、半ば無理やりレントゲン撮ってもらって、全然異常なかったんですけど、「松葉杖、ありますよね……?」って。松葉杖処方してもらったんです。あくる日、意気揚々と松葉杖でバスケ部の前を通って。「運動部とかじゃなくても怪我とかしますけど」みたいな感じで。
—(笑)。そのメッセージ、おそらく絶対届いてないと思います。
●五頁、ギャルに屈した過去
ぽんちゃん小学校低学年時代の「コナン君」及び「コナン君の鼻」の絵の練習ページ
—高校時代はどうですか?
ぽんちゃん : 高校時代は軽音楽部に入ったんですけど、後輩に強いギャルみたいな子達が入ってきたんですよ。かわいくて演奏もガツガツ弾く感じの。SCANDALみたいな。
—それは強そうですね。
ぽんちゃん : 私の代にも、そういう子たちと対等に渡り合っていける気さくな子たちもいたんだけど、私はその軍団には入れないキャラで、後輩との関わりを一切持たないようにしていたんです。後輩が歩いているような時間はなるべく廊下とかを歩かないようにして、後輩が通りかかったら、スッとかわしていました。
—後輩なのに(笑)。
ぽんちゃん : でも、ある日、私が油断して階段降りてる時に前から後輩が軍団で歩いてきたことがあって。
—油断……はい。
ぽんちゃん : その時に何て言ったらいいかわからなくて……。バッて道の脇にずれて、「お疲れ様です!」って言っちゃって。その後、階段降りたあとで、後輩達の笑い声がすごい聞こえてきて。「屈してしまった」ってことがありました。
—それは、つらい体験ですね……。
●六頁、 “リアタイ”で虚言

—当時、まだガラケーが主流でしたが、ネット上での振る舞いなどはどうでしょう。前略プロフィールとかやってました?
ぽんちゃん : やってましたね。“リアタイ”ってありましたよね。
—ありました。リアルタイム。繋がらないTwitterみたいな感じで、一言のみ発信するブログみたいな。多くの女子が登録していましたよね。
ぽんちゃん : そうそう。私もそれをやってて。「そんな顔されたら好きになっちゃうでしょ!わら」「わたしチョロいなーわら」みたいなことを投稿していました。
—結構、赤裸々に書くタイプだったんですか?
ぽんちゃん : いや、現実には何も起きてないんですけど。
—虚言をしていたと。
ぽんちゃん : やっぱりちょっと、見栄っ張りというか、周りの目をすごく意識してたところはあるのかなと思います。
●七頁、「家だと関西弁」という嘘
ぽんちゃん小学生時代のオリキャラ漫画「ワンダーランド♡」(1ページ)
—直近の黒歴史も教えてください。
ぽんちゃん : うーん。関西弁かな。うち、母親が関西人なんですけど、友人と会話しててイントネーションが若干関西弁っぽくなっちゃったときに、「あれ? 関西弁?」とか聞かれると「うち、お母さん関西人だから、家では私も関西弁なんだよね」って答えちゃうんですよね。全っ然、しゃべってないのに。
—地味だけど腹たつ嘘ですね(笑)。それいつごろの話ですか?
ぽんちゃん : 今でもです。
—え、今でも……?
●八頁、○○に改名したい

—黒歴史を更新し続けていると。他にもあるんですか?
ぽんちゃん : あとは名前。「地球のお魚ぽんちゃん」って本当に後悔しています。
—え、そうなんですか、キャッチーでいいと思いますけど。
ぽんちゃん : 挨拶する時とか恥ずかしいんですよ。「自分、何言ってんだろうな」って。
—そもそも、なんで「地球のお魚ぽんちゃん」なんですか?
ぽんちゃん : 最初は「お魚バカ赤ちゃんぽんぽこ」っていう名前だったんですけど、これから活動していくにあたって、名前に「バカ」が入っているのはどうかな、と思って。顔が魚っぽいので「お魚」は残して、当時ちょうど『平成狸合戦ぽんぽこ』がTVでやってて、「『ぽんちゃん』って呼びやすいな」と思って「ぽんちゃん」、自分がいるのは宇宙ではなく地球なので「地球」。で、「地球のお魚ぽんちゃん」です。
—結構ざっくりですね。
ぽんちゃん : マジで、マジで本当に後悔してます。
—じゃあ、今もしも最初からやり直すとしたらどんな名前がいいんですか?
ぽんちゃん : うーん。なんか……キレイな感じの……「みやざき はるか」とか……。
〜総括〜
エロへのただならぬ熱意、過剰な自意識、そしてそれらが引き起こす、なんとも歯がゆく、赤面必至の黒歴史の数々……。幼少期から現在(26歳)まで続く彼女の「童貞感」は確かに「血」と呼んで差し支えないほど、一貫していた。
多くの人にとって「童貞感」はこれまでの人生のどこかで経験したことのある感覚ではないだろうか。ぽんちゃんがアバンギャルドな笑いを提供しながら、これほどまでに多くの人々に支持される所以は、この普遍的でキャッチーな「童貞感」に根付く欲望や自意識を、直接的すぎず、ひねりすぎず、絶妙なバランスで表現し続けているからかもしれない。今後も、この淑女が生み出す作品に注目だ!
(取材・執筆 伊藤紺)
●地球のお魚ぽんちゃん 漫画家。「男子高校生とふれあう方法」「地球の4コマ」をはじめとしたギャグマンガがTwitterで話題を呼び、2016年に漫画『男子高校生とふれあう方法』(双葉社)を刊行。現在、漫画アクション(双葉社)にて絶賛連載中。その他、企業(exグリコ「ポッキー」、スパイシーソフト「チャリ走」)とのタイアップ漫画実績も。(Twitter/Instagram) ●伊藤紺 ライター/編集。1993年生まれ。調査記事、取材記事を中心に人物ストーリー、エッセイ、短歌なども執筆。クライアントの思想や意図を汲み取った企画提案が得意。制作ユニット「NEW DUGONG」ではビジュアルと文章を組み合わせたキャッチーな作品を多数制作。ZINEの制作やトークイベントを年に数回ペースで行う。(Profile/Twitter/Instagram) ●おくりバント婦人部 2018年4月吉日、満を持して株式会社おくりバントに婦人部が発足。 今をときめく婦人クリエイターにご協力いただき、婦人の婦人による婦人のための事業部として、イイ感じに活動を行う。