営業(おとこ)たちの挽歌 第1話「名刺のこころ」








著者近影
左:高山洋平
株式会社おくりバント社長。この漫画の原案者、モデル。年間360日飲み歩くプロ飲み師。自称営業マニア。こんな風貌だが、住宅ローンの審査はちゃんと通過しているし、娘たちの運動会にもちゃんと参加する。
右:サカイエヒタ
株式会社ヒャクマンボルト社長。この漫画の原作者。高山の家から5分の場所に住んでいるため、打ち合わせと称して急遽近所の公園に招集されることも。根深い高卒コンプレックスを抱えている。
今回は名刺交換だけで相手と取引を成立させる話だったけど、自称「営業マニア」の高山社長は実際にこんな経験あるんですか?
いやいや、あるわけないじゃん。でも名刺4枚はよく出すね。笑ってはくれるけど、それだけで取引成立は営業マニアでもさすがにありえないよ。ゴクゴク。
そこは意外と冷静なんだ。ところで、名刺交換は新社会人が最初に覚える作法のひとつですね。「名刺は相手より下の位置に出さなきゃいけない」「相手の名前の上に指を置いて受け取ってはいけない」なんてよく言われるけど、こういったマナーについてはどう見てます?
意地でも下の位置から渡してくる営業マンっているね。でも丁寧になりすぎたり、ルールに従順すぎたりするとかえって無礼になってしまうこともあるから気をつけたいところだよね。気を使いすぎた丁寧な対応をしてくる飲み屋とかに行くと、正直面倒臭いなって思うし。ゴクゴク。
あーたしかにありますね。お客さんが大切なのはわかるけど、あまりにも丁寧すぎると煩わしくなります。営業マンでも、やたらとこちらを褒めてきたり気を使ってきたりするとちょっと引いちゃうときがありますね。
そもそもこれらは相手への「媚び」の心理からくるものだよね。お客様は神様です、的な。中途半端な媚びがいちばんよくない。どうせやるなら、窓を拭くぐらいしないと。
ん? 窓を拭く?
相手の会社の会議室で待っている間、部屋の窓やホワイトボードを雑巾で拭くんだよ。事前に100均で雑巾買ってさ、どうせやるならそこまで媚びないと。ゴクゴク……。すみません、レモンサワー。
それは斬新だわ。会議室に入ってきた向こうの担当者も怒るに怒れないし。
人間、怒るに怒れないときは笑うしかないから。相手先の会議室に飾ってある社訓をノートに写して待っていてもいいし。そこまで突き抜けると相当面白いよ。でもこういったやり方は、なにを売っているかにもよるよね。ダムとかは絶対無理だと思う。
さすがにダムは雑巾掛けくらいじゃ売れないか。
商材だけじゃなく、もちろん相手方の性格や立場などにもよるよ。ただ一番重要なのは「そんな冗談をできる自分かどうか」だね。名刺4枚出したり、会議室で雑巾掛けをしたりしても笑ってもらえる自分かどうかの判断はしないと。ゴクゴクゴク。
自分を客観視できないと危険ですね。そこ履き違えると大スベリしそう。自分がやってもちゃんと笑ってもらえるギリギリのもの……。
オレの場合はたまたま、それが名刺4枚交換や雑巾掛けだったわけだけどね。常に自分を客観視して、営業マンの常識とされているものを鵜呑みにせず本当に正しいのかと疑問を持ち、自分自身着こなせる営業スタイルを追求する事が出来るのが、営業マニアとしての必須スキルだよ。ゴクゴクゴクゴク。すみません、レモンサワー。
……いや、そもそも「営業マニア」ってなんだよ。
〜6月某日、小雨降る中野のバーにてレモンサワーを傾けながら〜
(原案/高山洋一 原作/サカイエヒタ 漫画/丸岡九蔵)