冷やし中華まであった?意外に先進的だった平安時代の麺料理:平安時代の雑学【7】 (2/2ページ)
こうした人々による麺料理は異国文化を楽しむ一面もありましたが、迷信深い時代と言うこともあり、様々な行事の際に麺を食していました。
中でも有名なのは七夕の日に麺を食べると言うもので、“七月七日に麺を食べるとマラリアに感染しなくなる”と記された古代中国由来の伝説に基づいていました。今も七夕様の日には素麺を食べる方も多いですが、それは当時の宮中文化から来ているのです。
もちろん、麺は保存性に優れると言う実用的な面にも注目されており、稲の端境期に保存しておくべき食べ物としても重要視されます。しかし、まだ庶民の味と言うまでには程遠く、行事食として寺院や神社で用いられるに留まっていました。
高級品の麺はお供えの定番で薬としても扱われた…でも、独り占めすれば祟られる?最後に、平安時代の文学書である『今昔物語』から麺にまつわる逸話を紹介しましょう。ある寺の僧侶が麦縄(麺)を手に入れ、客人に振る舞ってもまだ残っていたのにも関わらず、『古い麦は薬になるからナ』と人に与えることもせず、隠してしまうと言う説話が収録されています。
なお、その意地悪な坊さんが麺を一年後に取り出すと蛇になっていたが、他人には食べ物にしか見えなかったと言うオチがつきます。つまり、寺に上納されたもの(つまり仏様へのお供え)を、勝手に奪うのは良くないことだよ…と戒める話です。
一方でこの説話は、麺に使われる麦が薬の一種として扱われたこと、寺社に納められるお供えとしても麺が使われていたことを示す、貴重な資料でもあります。このようにして、当初は異国の珍味や薬、或いは宗教色がやや強めの食べ物として、麺類は日本に伝来しました。庶民の味として世界的に知られる麺料理は、近世以降となるのですが、それはまたの機会にお話いたします。
参考文献:「日本人は何を食べてきたのか」永山久男
トップ画像:酒飯論絵巻
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