正体不明の不調の原因は自然から離れたせい? 「自然欠乏症候群」について

Doctors Me

「Doctors Me(ドクターズミー)」コラム画像
「Doctors Me(ドクターズミー)」コラム画像

空調の効いたオフィス、夜でも照明で明るい部屋…日常を振り返ってみると、自然からかけ離れた生活を送っていると感じる方も多いのではないでしょうか。

「自然欠乏症候群」という概念は、このように自然から遠ざかっている生活習慣が心身の不調の原因となるというもので、近年話題になっています。



自然と触れ合うことは人の心身の健康にとってどのように大切なのでしょうか。精神科医の井上智介先生に解説していただきました。



自然欠乏症候群とはなんのこと?

スマホゲームをする子どもたち


自然欠乏症候群は現代社会で非常に注目されていますが、正式な病名ではありません。自然から遠ざかった生活をすることによって、全身の倦怠感や不眠が引き起こされる可能性がある、という概念です。



昔のように公園などで泥だらけになるまで遊んでいる子どもを見る機会は減った一方で、部屋の中でお菓子を食べながらスマホゲームに没頭する子どもの姿をよく見るようになりました。



子どもだけではなく、大人も長時間の通勤電車に揺られて朝から晩までパソコンとにらめっこをするような生活習慣が広まっているように、自然と接する機会はめっきり減っています。




自然が欠乏するとどんな問題が起こる? 

倦怠感を感じる男性


自然欠乏症候群の症状としてまず挙げられるものは全身の倦怠感です。「なんとなくだるい」といった感覚があるものの、内科受診で様々な診察や検査を受けてもどこも悪いところはなく正常範囲との結果が出ます。



悪化すると、まるでうつ病のように「何もするような気力がでない」や「眠れない」などの症状を呈してきます。



そうした症状から精神科や心療内科を受診するものの、うつ病の診断基準は満たさないため、軽めの抗不安薬や睡眠薬などの処方を受けることになります。しかし、こうした薬の服用では一向に症状が回復しないことが特徴です。



子どもでは、落ち着きや集中力ががなくなり、忍耐力がなくなるなど、ADHD(注意欠陥多動性障害)に似たような症状を呈することもあります。




なぜ自然に触れていないと問題なの? 

アウトドアを楽しむ男女


自然から遠ざかっている、例えば空調の整ったビルの中のような環境では、自然の中にいる状態と比べると目、耳、鼻、舌、皮膚などに刺激を受けることは少ないといえます。自然に触れることで五感が刺激され磨かれていくため、自然に触れる機会がないと人間が本来に持っている感覚が弱っていくと考えられます。



また自然の中では、予測できないことが起こるため対応力が身に付きます。突風で帽子が飛んでいったり、足元が舗装されておらずガタガタであったり、昆虫や動物が急に飛び出してくることもあります。こうした刺激から遠ざかることで、危険を察知する感覚だけでなく、物事に対する注意力も衰えてしまいます。




自然欠乏症候群を改善する方法は? 

早起きする女性



自然欠乏症の症状を改善するためには、自然に触れるような生活を送ることが理想ですが、現代社会では難しいところもあります。だからこそ、まずはできることから生活に取り入れていくようにしましょう。



日の出と日の入りを意識した生活

人間にはホルモンに基づいた体内時計が備わっているので、日の出の時間頃に目をさまし、日の入りの時間頃には仕事を終えて体をリラックスモードに持っていくように心がけるとよいでしょう。



木や自然素材を多く使った家や家具を選ぶ

ホルムアルデヒドなどの化学物質が目の痒みや喉の痛みを誘発することがあります。綿や麻のシャツを着たり、観葉植物など自然素材を工夫したりして生活に取り入れましょう。



スマホやPCの使用時間は極力少なめに

スマホやPCから放出されるブルーライトは、睡眠を誘発するホルモンであるメラトンを減少させ、自然な入眠の妨げとなります。そのため、寝る直前までスマホやPCを使っていることで不眠症になってしまう人もいます。




身近な自然、日光をうまく活用しよう

日光浴する女性


自然に接する一番簡単な方法は日光浴です。日光に含まれる紫外線を避けるべきと考える方も多く、日光浴をする人は少なくなっています。しかし、極端に紫外線をあびなければ、日光浴にもメリットがあります。



日光はビタミンDの生成に必要であり、日光を浴びることで骨粗鬆症を防止します。さらに日光浴はセロトニンの分泌も促すとの結果もあり、うつ病対策にもプラスになると言われています。




最後に井上先生から一言 

海を眺める女性


全身の倦怠感や不眠などの症状があれば、まずは内科や精神科を受診してみてください。その結果、様々な診察や検査をしても正常範囲と診断されたときは、自然欠乏症候群を思い出してもいいでしょう。



ただし、自然欠乏症候群は決して都会の生活や便利になった現代社会を否定するものではありません。今過ごしている生活や環境がいかに自然から遠ざかっているかを自覚し、生活に自然を取り入れるきっかけになると前向きに捉えてもよいでしょう。



自然を取り入れることで生物としてのヒト本来の生き方に近い生活が送れるようになり、その意味合いではより健康になるといえるのではないでしょうか。


【監修:医師 井上 智介】
プロフィール)
島根大学を卒業後、様々な病院で内科・外科・救急・皮膚科など、多岐の分野にわたるプライマリケアを学び臨床研修を修了する。
平成26年からは精神科を中心とした病院にて様々な患者さんと向き合い、その傍らで一部上場企業の産業医としても勤務している。
「正体不明の不調の原因は自然から離れたせい? 「自然欠乏症候群」について」のページです。デイリーニュースオンラインは、カルチャーなどの最新ニュースを毎日配信しています。
ページの先頭へ戻る