本好きリビドー(213) (2/2ページ)
大衆が明治新政府をどう見て、どう評価していたか。「維新の三傑」といわれる西郷隆盛、大久保利通、木戸孝允の実像は…といった、これまであまり語られることのなかったテーマで、明治維新を“裏読み”しようという本だ。しかし、読み進めていくと、裏読みのほうがむしろ真実ではないかと思えてくる。
例えば、官軍を皮肉った「風刺錦絵」という絵をテーマにした章がある。風刺錦絵とは絵に薩摩藩や長州藩の人物、徳川幕府15代将軍の慶喜らを登場させ、強烈に皮肉ったものだ。
といっても、あからさまに彼らの姿を描いてはいない。子どもが相撲をとっていて、その相対する2人の小僧力士が官軍(薩長)と幕府軍なのである。そして、庶民はこの取り組みを、幕府に同情しつつ、冷ややかに見ていたという。大衆が幕府に同情的なのは、官軍が嫌われていたからに他ならない。
著者は社会思想史を専門とする森田健司氏。なぜ官軍が嫌悪されていたかを解説し、そこに明治維新の影を浮かび上がらせる興味深い1冊である。
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)