秋津壽男“どっち?”の健康学「大病の前兆となるのは肩凝りか腰痛か?脳の誤認伝達で見逃す大病の初期症状」

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秋津壽男“どっち?”の健康学「大病の前兆となるのは肩凝りか腰痛か?脳の誤認伝達で見逃す大病の初期症状」

 夏になって、寝苦しい日々が続きます。エアコンをかけっぱなしにして寝てしまうと、翌朝にだるさを感じることがあるでしょう。慢性的に肩凝りや腰痛などがある人にとって、寝冷えは症状を悪化させますので注意してください。

 では、ここで質問です。肩凝りと腰痛により重篤な病気になる可能性があるのはどちらでしょうか。

 厚生労働省の国民生活基礎調査(平成29年度版)によると、肩凝りと腰痛は男女ともトップの有訴者率です(腰痛は男性1位・女性2位、肩凝りは男性2位・女性1位)。男性の場合、人口1000人中92人が腰痛を、60人が肩凝りを訴えており、この割合は高齢者になるほど多くなります。

 注意したいのは、肩凝りも腰痛も関連痛のケースが多々あることです。関連痛とは、痛みとなる原因とは異なる箇所に感じる痛みの総称で、例えば内臓に疾患があった場合、その痛みが脳に伝達される際に、内臓ではなく皮膚からの痛みだと脳が誤認識します。関連痛は病気の前兆をわかりにくくするのです。

 肩凝りとは、姿勢が悪かったり、運動不足であったり、冷房による冷えなどの血行不良、精神的ストレスなどが原因です。背中のいちばん表層にある、首から肩甲骨へかけてのひし形の筋肉である僧帽筋が痛くなります。

 肩凝りの関連通で最も怖いのは、脳付近の病気です。耳や首に近い箇所が痛み、頭痛や吐き気を感じた場合、脳梗塞や脳出血、脳腫瘍の初期症状である可能性があります。

 中でもいちばん怖いのは、くも膜下出血でしょう。大抵は、突然バットで後頭部を殴られたような激しい痛みで発症します。しかし、時には後頭部に肩凝りのようなはっきりしない痛みが起こることもあります。ふだんの肩凝りと違う後頭部の痛みには注意してください。くも膜下出血で命を落とした人を見ると、肩凝りからひどい頭痛になった、というケースが少なくないのです。

 また、ある日突然、今まで感じたことがない片側のみの肩凝りを感じた場合、数時間の間に心筋梗塞を起こす可能性があります。特に心臓に近い左肩が凝る場合、心臓の異常を知らせるサインかもしれません。

 痛みが肩に近い場合は狭心症の可能性があり、肩凝りかと思ったら胸が痛くなるという場合もあります。肩凝りは想像以上に怖いケースがありますので、過去の凝り方と違うパターンには注意してください。

 このほか、肩凝りを伴う疾患として、脊髄腫瘍や椎間板ヘルニア、緊張型頭痛、眼精疲労、胆石、手根管症候群、頸椎捻挫など、大病以外にも数多くの症状があります。

 一方、腰痛は肥満や背骨のゆがみ、血流の滞りなどが原因となります。腰痛の関連痛は、腎臓の病気である腎盂腎炎です。これは腎臓に細菌が感染し、39度ほどの高熱が一週間ほど続く症状です。しかし、腎盂腎炎以外に怖い病気はほとんどなく、肩凝りほど大病の可能性はありません。

 つまり、注意したいのは腰痛よりも肩凝りであり、肩凝りは万病のサインとも言えます。

 肩凝りの初期症状は肩や首の張りや痛みで、この段階ではマッサージや湿布などで様子を見たり、整形外科に通うことですが、これが目のかすみや頭痛、嘔吐、めまいを伴ってくると赤信号です。内科か神経内科を受診してください。また、激しい頭痛や手足のしびれを感じる場合は脳神経外科となります。いずれの症状も、早期発見がカギとなります。

■プロフィール 秋津壽男(あきつ・としお) 1954年和歌山県生まれ。大阪大学工学部を卒業後、再び大学受験をして和歌山県立医科大学医学部に入学。卒業後、循環器内科に入局し、心臓カテーテル、ドップラー心エコーなどを学ぶ。その後、品川区戸越に秋津医院を開業。

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