ガッツ石松が語る「山根明前会長、村田諒太、そして…オレが見たボクシング50年」

日刊大衆

ガッツ石松が語る「山根明前会長、村田諒太、そして…オレが見たボクシング50年」

 列島が注目した日本ボクシング連盟の“首領”を巡る騒動。その背後には拳闘界が抱える“宿命的な難題”があった!

「山根さんが辞めたから、“OK牧場”となるかどうか、それは分からない……」 そう語るのは、ご存じ、ガッツ石松氏(69)だ。

 去る7月28日、日本ボクシング連盟の関係者ら333人がJOCなどに提出した告発状によって、同連盟の“終身会長”だった山根明氏(78)の数々の疑惑が明らかとなり、ニュース、ワイドショーを大いに騒がせたのは、ご存じの通り。その筋の人と見紛うコワモテな風貌に、威圧的な語り口。長きにわたり連盟に君臨してきたとされる山根氏による助成金の不正流用や、試合用グローブの独占販売疑惑、自身との関係が深い奈良県出身の選手を贔屓する不正ジャッジ問題など、告発状に記載された疑惑は、実に12項目に及ぶ。

 ロンドン五輪金メダリストで、現・WBA世界ミドル級王者の村田諒太までが、〈そろそろ潔く辞めましょう、悪しき古き人間達、もうそういう時代じゃありません〉とフェイスブックで怒りを表明。山根氏と元反社会組織関係者との関係も明らかとなったことで、7日にはスポーツ庁の鈴木大地長官が辞任勧告を行った。これを受けて翌8日、山根氏は会長職の辞任を発表。報道陣を前に反省の弁を述べた。今後、連盟が“脱山根”で体制の刷新を成功させられるかに注目が集まっている。

 それにしても、信じ難い暗部が次々とさらされた今回の辞任劇――。1966年にプロデビューし、74年にWBC世界ライト級王者のタイトルを獲得。現在は、日本の歴代世界チャンピオンによる友好団体『プロボクシング世界チャンピオン会』の会長を務め、ボクシング界に身を置いて、すでに半世紀を超えるガッツ氏は、一連の騒動を、どう見たのか。「山根さんは、副会長時代の功績もあって終身会長になったんだろうし、同情する部分もある。ただ、彼の昔気質なやり方は、もう現代では通用しなくなっているということだね」

 それが最も顕著に表れているのは村田との関係だという。アマチュア時代、奈良出身の村田に、山根氏は特に目をかけていて、ロンドン五輪で金メダルが獲れたのも、自身の功績があったと明言。それだけに、村田がプロ入りする際には、猛反発。追放同然のドタバタ劇が展開され、プロ側が大金を連盟に寄付する形で事態を収束させたことが報じられている。

「山根さんなりに村田を一生懸命応援していたのは、その通りで、自分がメダルを獲らせたという自負もあるはず。ただ、村田は村田で、世話にはなったけど、頑張ったのは自分という自負もある。そこの食い違いなんだろうな。村田はいい青年だよ。ただ、ハッキリ自己主張する“現代っ子”という感じだから、まあ、“昭和の頑固オヤジ”のような山根さんとは、合わないだろうね」

■アマチュア側が抱えるジレンマも根深い

 さらに、「アマ側の抱えるジレンマも根深い」と、ガッツ氏は指摘する。「アマ側には、せっかく育てた人材をプロにかっさらわられてしまうという怒りがあるはず。結婚じゃないけど、結納金も払わず娘をかっさらわれちゃ、いい気はしないでしょ(笑)。だから、村田サイドもテレビ局と契約したりする前に、山根さんに筋を通す義理堅さがもう少しあったら、関係は違っていたかもしれないと思うよ」

 助成金の不正流用疑惑についても、ガッツ氏は「山根さんなりの親心もあったと思う」と言う。問題となっているのは、リオ五輪出場の成松大介選手(28)に対し、日本スポーツ振興センター(JSC)が2015年度に交付した助成金240万円が、山根氏の指示で別の2選手と80万円ずつに3等分されていたこと。

「3人の兄弟がいたら、3等分して食べろという思いやり。問題になって、自分の時計を売って160万円を成松に返したんだけど、別の2人に“80万円を返せ”と言ったり、連盟の金から補てんしろとは言っていない。そのへんも昔気質なんだよ。オレたちの時代だったら、3等分してくれって言われたら、“分かりました”って言ったと思うけど、現代っ子は違うんだろうね。元反社会組織関係者との交際にしたって、若い頃に仲良くしていた人が、そうなったっていう話だから悪気がない。彼は良くも悪くも正直な人なんだと思う」

 こう聞くと、ガッツ氏は山根氏を擁護しているようにも聞こえるが、問題発覚当初から、山根氏に一定の理解を示しつつも、「彼は責任を取るべきだ」と一貫して主張していた。「山根さんは、オレの電話帳の一番上に住所と名前が書いてあった。電話をかけると、ゴッドファーザーのテーマ曲が聞こえるっていうから、この間、かけてみたら“ただいま、お客様の都合により……”って、かからなかったな(笑)。彼にはどっかで会ってるし、話もしているんだろうけど、ほとんど記憶がないのよ。同じボクシングでも、こっちはアマじゃなくて、あくまでプロの世界だから、それほど関係がなかったはずだからね」

■東京オリンピックで除外される可能性も

 こうガッツ氏が言うように、いまだにプロとアマでは別世界だという。「プロは、昔は6オンスの薄いグローブで、まともに食らうと、ジャブでも蝶々とパピヨンが天然色で目の周りを飛んで、“あんた、誰?”みたいな感じだった。一方、アマはヘッドギア着用で、グローブも10オンスと12オンス。ランニングを着ているだけでもプロからしたら、だいぶ違う。同じ競技に見えても、プロとアマじゃ大きな差があるのよ」

 ガッツ氏は現役時代、アマ選手がプロ転向してきた際には、プロの厳しさを拳で教えてきたという。「昔、アマでトップだった選手がプロ転向で、うちのジム(ヨネクラジム)に入ってきたときは、まずリングに上げて鼻血が出るくらい、ぶっ飛ばしたもんだよ。米倉会長には“い、い、石松、やめろ~っ”って怒鳴られたけど、最初に体でプロとアマの違いを教えてやらないと、モノにならないから、それがオレたちから言わせると“阿吽の呼吸”というか、愛情なんだね」

 そんなガッツ氏が、プロの厳しさを最も感じたのは、プエルトリコでの6度目の世界タイトルの防衛戦のときだったという。「プエルトリコの国民的英雄エステバン・デ・ヘススが相手でさ。向こうのホテルの部屋で契約書にサインするときに、テーブルの上に、それと分かるようにピストルが置かれていてね。“ああ、こりゃ勝ったら、無事じゃ帰れないかもな”って思ったよ」

 ガッツ氏らが文字通り、命懸けでつないできた日本ボクシング界の歴史。現在、日本には6人の世界王者がいるが、残念ながら人気の低迷が深刻。また、20年の東京五輪ではボクシングが競技種目から除外される可能性がある。そんな中で、今回の騒動は起きたのだ。では今後、ボクシング界は、どうしていくべきか。「山根さんは潔く辞めたんだから、今後はクリーンな体制を作ることだね」

 では、プロの世界は?「ファンも思っていると思うけど、今は団体が多すぎるよね。AKBだかTPPだか知らないけど(笑)、また増えるなんて話もあるみたいでさ。一番強いはずのチャンピオンが何人もいるのは本来、おかしいよね。それと、ボクシングはスポーツでもあり、格闘技でもあるから、万人に理解してもらうことは難しくて、それだけ改革が難しいという部分もあるよね」

 ボクシングの人気復活は成るのか――!?

■ボクシング団体と現在の日本人世界王者

【WBA】1921年設立 井上尚弥、村田諒太
【WBC】1963年設立 拳四朗
【IBF】1983年設立 岩佐亮佑
【WBO】1988年設立 伊藤雅雪、木村翔

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