『透明なゆりかご』で描かれた虐待と母娘の苦悩 (2/2ページ)

日刊大衆

 しかし、それらの行動は“注意欠陥多動性障害”という先天的な障害のせいだと診断され、医師から「お母さんの育て方のせいではない」と言われた史香は、瞳に安堵の光をにじませ、体中の力が抜けたようだった。これまでアオイを叱りながらも、それ以上にずっと自分を責め続け、うまくいかない子育てに、言いようのない悔しさを感じていたはずだ。おそらくこの時期から、親子の関係性は劇的に変化し、少しずつ笑顔が増えていったのだろう。
 
 子どもが幼少期に受けたトラウマは、簡単に癒えるものではない。ふとしたきっかけでその傷は開いてしまう。母親も、傷つけてしまったという思いがなかなか消せず、常に後悔にさいなまれる。お互い歩み寄ることをやめなければ、いつか寄り添って生きることはできる。そしてお互いへの優しさで、少しずつ幸せになっていける。

 ラストでアオイは、史香が書いていた母子手帳を読んで、自分が生まれたときに、母が自分に注いでくれた純粋な愛を感じ、母に少しずつ素直に寄り添っていく。一時はぎこちなくなってしまった親子だったが、アオイの気持ちを感じた史香も、心からの笑顔を見せる。それは今までの笑顔よりもずっと晴れやかで、穏やかだった。親子の関係も、時間とともに変わっていくことはある。それでも今、愛に満ちあふれているこの2人の今後を見守っていきたい。

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