元横綱・武蔵丸が喝!「今の横綱は休場しすぎ、お客さんにも失礼だよ」
優勝回数12回。192センチ、240キロの巨体を生かした押し相撲を武器に、若貴兄弟と相対した横綱・武蔵丸。その風貌から「角界の西郷どん」のニックネームを持ち、2003年、現役引退後は部屋付き親方として後進の指導にあたり、2013年、東京・江戸川区に武蔵川部屋を創設した。現在は18名の力士の育成に励む一方、元横綱の目線で、角界に厳しく提言するスポークスマンでもある。その武蔵川親方に、9日からスタートした秋場所の展望を語ってもらった。
武蔵川親方(元横綱・武蔵丸)PROFILE
1971年5月2日生まれ。アメリカ合衆国ハワイ州オアフ島出身。第67代横綱。1989年秋場所で初土俵。1991年に新入幕し、1992年に小結、1994年に大関に昇進。1999年、横綱に昇進。2003年に引退し、一代年寄・武蔵丸として後進の指導に当たった後、2013年に年寄・武蔵川を襲名。武蔵川部屋を再興する。
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――先の名古屋場所では、関脇・御嶽海(25)が初優勝。秋場所は大関獲りの場所になりますね。
武蔵川(以下、武) 先場所は横綱、大関陣が、こぞって休場したからね。その中でチャンスをつかんだ面もあると思うけど、今場所も上位陣に休場者が出るか、出ないかで御嶽海の星勘定は変わってくるだろうね。問題は前半戦。押し相撲だから、前半で勝ち込んで波に乗っていけば、いい線いくんじゃないかと、俺は見てる。(大関昇進基準とされる3場所33勝まで)あと、11勝か? 今の勢いだと、11勝は固いんじゃない?
――一方、心配なのが、先場所まで8場所連続休場の稀勢の里(32)です。
武 稀勢の里ねぇ。秋場所出場して、前半戦で負けたら、もう終わりだよ。「秋場所で進退をかける」つもりでいるんだと思うんだけど、焦って出ちゃダメなんだよ。体つきを見たら分かるだろう? 足が細くて、バランスが取れていない。四股を満足に踏んでない体だよ。自分が横綱時代に休場した経験を振り返っても、後半戦までいけるくらいの自信を持てるようになってから、出たほうがいい。それで、優勝争いに絡んでくれば、横綱を続けられるし。万全になるまで、出ないなら出ない。そういう覚悟じゃないとなぁ。
ケガという意味では白鵬(33)も、だんだんケガが多くなってきたよね。(先場所途中休場の原因になった)右ヒザのケガだって、どこで痛めたのか分かんないし……。水がたまっているっていうけど、俺も同じくヒザを痛めたことはあったけど、(白鵬は)水がたまるような体じゃないと思うんだけどな(笑)。まあ、とにかく今の横綱、大関は休場しすぎ。それじゃあ、相撲を見にきてくれるお客さんにも失礼だよ。
――確かに、そうですね。御嶽海に続く若手として、豊山(24)、朝乃山(24)などの力士も台頭してきました。特に豊山は名古屋場所千秋楽で、初優勝を決めた御嶽海に熱戦の末、土をつけ、注目を浴びました。
武 豊山、あの相撲はよかったけど、まだまだだな。体が大きいんだから(185センチ、181キロ)、相手を一発で持っていく気持ちで行かないと! 組んだら弱いんだから、押し相撲に徹してほしい。朝乃山も体が大きい(188センチ、165キロ)けど、相撲の途中で足がそろっちゃったりするんだよな。これから直すところはいっぱいある。
俺が彼らより買ってるのは、貴景勝(22)だな。体全体で押していく相撲が魅力的だし、稽古をよくしている体だよ。ライバルの阿武咲(22)と比べても、貴景勝のほうが断然上だ。ガッツもあるし、ああいう相撲は見ていて面白いよ。
あと、何を考えてるのか分からないのが、遠藤(27)。左四つが得意らしいけど、左四つなのか右四つなのか、相撲がハッキリしないんだよな。それでも相撲センスがあるから勝てているんだろうけど、すぐケガするし、足腰も弱すぎるよ。ケガを治すなら休場して徹底的に治すとかしないと、取り返しのつかないことになる。CMとか出てる場合じゃないんだよ! このところ少し復活してきた逸ノ城(25)もそうなんだけど、とにかく、みんな稽古量が足りてないんだよ。
――稽古はウソをつかないということですね。
武 そうだよ! 俺がいた(以前の)武蔵川部屋は関取衆の人数が多かったということもあったけど、稽古時間も長かったし、厳しかった。しかも、稽古が休みの日は師匠(元横綱・三重ノ海)が決めていて、休みはほぼなかったよ(笑)。そんな中から、俺とか、大関の武双山、出島、雅山といった連中が出たんだよ。当時は、それが当然だと思っていたから、「休みたい」とか「つらい」なんて思いもなかったけどね。
――武蔵丸、武双山らを誇る武蔵川部屋と、貴乃花、若乃花、貴ノ浪らがいる二子山部屋とはライバル関係でしたね。
武 武蔵川 VS 二子山の時代だよね。若貴に曙がいて、今思えば、すごい時代だったと思うよ。俺がハワイから来日して、入門したのは、彼らの1年半後なんだけど、2年ちょっととかで十両に上がった3人を見ていたからね。
俺は11場所(2年弱)で新十両を決めたんだ。全勝優勝(94年名古屋場所)したのが彼らより早いっていうのは、今でも誇りに思っている。貴乃花とは本割で48回も対戦した(19勝29敗)けど、お互い横綱だった01年夏場所千秋楽の相撲は強烈な思い出だな。
14日目の相撲で右ヒザをケガした貴乃花は、千秋楽の土俵に上がれるか微妙な状態。それまでの成績は、貴乃花が13勝1敗、武蔵丸が12勝2敗。本割で貴乃花が敗れ、両者は13勝2敗の相星になり、優勝決定戦へ。貴乃花への大声援が飛ぶ異様な空気の中で迎えた決定戦。武蔵丸を上手投げで下した貴乃花は「鬼の形相」で22回目の優勝を飾った。
武 俺は「目の前にいる貴乃花を倒すだけ」と思っていたけど、ケガをしている相手を前に、どういうわけか、力が出なかった。小泉(純一郎)首相は表彰式で「痛みに耐えて、よく頑張った。感動した!」と言ってたけど、本割で勝って、優勝決定戦に持ち込んだのは俺。俺は何か悪かったのかな? 俺は頑張ってなかったのかな? って、すごく悲しくなって、その夜、「もう相撲を辞めよう」と思ったんだ。
9月10日発売の『週刊大衆』では、引き続き武蔵川親方へインタビュー。地方巡業中に緊急搬送された貴乃花親方への思いなどを語っている。