秋津壽男“どっち?”の健康学「お酒を飲まなくても常に活動している肝臓。アルコール摂取を全くしない休肝日は必要か」

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秋津壽男“どっち?”の健康学「お酒を飲まなくても常に活動している肝臓。アルコール摂取を全くしない休肝日は必要か」

 猛暑だった今年の夏、仕事を終えたあとのビールほど格別なものはありません。お酒は飲み方しだいで薬にも毒にもなります。「百薬の長」の言葉もあるほど、アルコールを適度に嗜む分には食欲も増進され、血液の循環もよくなります。また、認知症の予防にもつながり、いいことずくめです。ただ、酒を飲みすぎれば健康を崩すだけに、適量を守ってほどほどに飲むのがベターです。では、ここで質問です。酒を飲まない「休肝日」に、意味はあるでしょうか。

 厚生労働省が定義する「生活習慣病のリスクを高める飲酒量」は、1日あたりのアルコール摂取量を40g(女性は20g)と定めています。ここから1日あたりの飲酒の適正量を考えると次のようになります。

ビール…ロング缶1本

酎ハイ…350ミリリットル1本

ウイスキー…ダブル1杯

日本酒…1合

ワイン…グラス2杯

 となります。まずはこの分量を飲んでいれば問題はないでしょう。

 飲酒は肝臓に負荷をかけます。しかし、肝臓は酒を飲まずとも、口に入れたものを肝臓で代謝して尿として排泄しています。つまり、アルコールを飲まない人でも肝臓はフル稼働しています。

 つまり、休肝日は「肝臓を休ませる」という意味で、有意義と言えます。ただし、飲まなかったからといって肝臓の機能が元に戻るわけではありません。多くの人が勘違いするのは「昨日は飲まなかったから今日は多めに飲める」と、ふだん以上に多量の飲酒をすることです。休肝日を取ったからといって多量の飲酒をすると肝臓の許容量を超え、血中のアルコール濃度も高まります。こうしたガブ飲みの回数が増えるほど体全体に負担がかかり、休肝日の意味がなくなることを理解してください。

 要するに、お酒は「蓄積毒」であり、総量で考えるのが基本となります。「俺は肝臓が強いから酒も強い」と考えるのは大いなる誤解で、単に悪酔いしにくいだけです。

 毎日1合を欠かさず飲むと1週間で7合ですが、1週間に2日の休肝日を設けて3合ずつ飲むと総量は15合となり、結果として適量を超えてしまいます。

 休肝日のあとにガブ飲みをすると肝臓だけではなく胃にも負担をかけ、体を壊しやすくなります。酔いも深くなってリスクも高まるため、それならば毎日適量を飲むほうがベターです。

 もし休肝日を設けるのであれば、理想は週に2日以上連続することです。48時間飲まずにいれば体内のアルコールは100%分解されるため、アルコール依存症の禁断症状の有無が明確になり、依存症かどうかの判断もできます。アルコール依存の判断や予防にも、休肝日は意味を持つのです。

 他にも、寝つきがよくなる、寝起きがよくなる、疲労回復がしやすいなど、さまざまな健康効果が実感できます。お酒を飲むことにより、常にこれだけのダメージを負っているという自覚にもつながるでしょう。

 もっとも、アルコールに強い弱いには個人差があります。飲むと顔が赤くなる人ほど遺伝的・体質的にアルコールの代謝がうまくできないため、無理に飲むと体に毒です。飲める人は適量を守りながらお酒を嗜む程度が健康的と言えるでしょう。

 休肝日を設けながら、食事とともにゆっくりと飲む。すきっ腹で飲まず、できれば仲間と談笑しながら飲む。これらを守るのがお酒との上手なつきあい方です。

■プロフィール 秋津壽男(あきつ・としお) 1954年和歌山県生まれ。大阪大学工学部を卒業後、再び大学受験をして和歌山県立医科大学医学部に入学。卒業後、循環器内科に入局し、心臓カテーテル、ドップラー心エコーなどを学ぶ。その後、品川区戸越に秋津医院を開業。

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