秋津壽男“どっち?”の健康学「延命措置の一つ“胃ろう”はすべきかどうか。長期間の介護になる覚悟での決断をすべし」 (2/2ページ)
自分で食事ができなくなった高齢者には嚥下訓練が行われますが、それでも難しい場合に食事の介助はせず、自然に看取るという考え方があるからです。胃ろうで寿命を延ばす行為は虐待とされていますが、私はこの考え方に賛成します。
日本の医療界には「延命処置を施せば生きられる高齢者を救わないのは犯罪行為だ」との罪悪感があります。家族に「なんとかしてください」と言われて施しますが、数年すると介護疲れがたまり、胃ろうの中止を望まれることもあります。法的に中止が罰せられるわけではありませんが、胃ろうを止めることは本当に勇気がいるものです。「10年20年もの間、面倒をみなければなりません。その覚悟を持てますか?」と問うべきでしょう。あるいは、家族と意見が異なる親戚が「どうして止めたんだ」などと家族の苦労を知らずに詰め寄るケースさえあり、親戚の中で総意の必要もあるでしょう。
高齢者を入院させる病院の場合、長い期間の治療代を稼ぐために胃ろうを進めるのも珍しいことではありません。
医療放棄・介護放棄にあたるとも言われますが、長い期間介護をすると、自分の時間は確実に減ります。愛する家族を介護したい気持ちもわかりますが、私個人は家族に迷惑をかけたくない、との考えが根底にあります。
■プロフィール 秋津壽男(あきつ・としお) 1954年和歌山県生まれ。大阪大学工学部を卒業後、再び大学受験をして和歌山県立医科大学医学部に入学。卒業後、循環器内科に入局し、心臓カテーテル、ドップラー心エコーなどを学ぶ。その後、品川区戸越に秋津医院を開業。