山田ルイ53世「一発屋芸人の人生はブームが去っても続きます」人生を“復活”させる人間力

日刊大衆

山田ルイ53世「一発屋芸人の人生はブームが去っても続きます」人生を“復活”させる人間力

 2017年に『新潮45』で連載させていただいた「一発屋芸人列伝」が、雑誌ジャーナリズム賞作品賞を受賞させていただきました。

「ジャーナリズム? オレが?」っていう驚きはありましたけど、08年に「ルネッサ~ンス!」で一発屋としてブームを起こした後の約10年、ほとんど褒められることがなかったので、シンプルに、ものすごくうれしかったですね。賞状と、副賞のPARKERのボールペンまでいただいて。

 もともと褒められるような人間じゃないんですよ。僕は中学2年の夏から、20歳手前くらいまで引きこもっていたことがあったんです。

 受験を乗り越えて名門といわれる私立中学に入学し、勉強もできたし部活でも活躍していたんですが、ある失敗がきっかけで学校に行けなくなってしまった。

 全然、大したことじゃなくて、少しハードルを下げれば普通に社会生活を送れたとも思うんですけど、それが許せなかった。これより上の自分じゃないとダメだみたいな自尊心、しょうもないプライドがあって、どうしてもできなかったんです。

 20歳になる少し前、成人式のニュースを見て、これじゃアカンと焦って大検を取って、地方の大学に滑り込んで、引きこもりからは脱するんですが、その大学も2年でドロップアウト。その後は上京して、吉本興業さんのお笑い芸人養成所「NSC」に入って芸人の道に進みましたが、なかなか売れっ子にはなれなかった。でも、履歴書の経歴もボロボロだから、当然、就職もできないし、何もできない。他にやることがないから芸人を続けていたようなものでした。

 そんな僕が「ルネッサ~ンス!」で仕事がバ~ッと入って、やっと飯が食えるようになったとき、これでやっと社会の中に戻れる、真っ当な人生を歩めるっていう喜びがありましたね。

■負けても立ち上がる一発屋の皆さんの姿を知っていただきたい

 ただ、ブームは長くは続かず、気づいたときには、世の中からは「消えた」「死んだ」「面白くない」という、非常に雑な扱いをされるようになってしまった。

 一発屋芸人というのは、世間の皆さんにとっては、人生の節目節目で、「あのとき、あのギャグはやっていたな」っていう人生のしおり、ポストイット的な役割でもあると思うんです。でも、だからといって、その扱いはあまりにも寂しいんじゃないかという悔しい思い、言ってみたら僕の私怨が、今回の「一発屋芸人列伝」を書くモチベーションでしたね。

 取材をさせていただいたのは、レイザーラモンHGさん、コウメ太夫さん、テツandトモさん、波田陽区さんなど、10組の一発屋芸人の皆さん。僕はもちろん、あのとき、こうしておけば、ああしておけばっていう気持ちもありつつ、そういう自分のダメなところや失敗を、ゴクリと飲み込み、今も芸人であり続け、ルネッサンス(再生、復活)に向け、次の一手を仕込んでいる人たちです。

 たまにテレビに呼ばれると、過去の最高月収と現在の収入を告白させられ、「えぇ~」みたいに驚かれる、そんな役割だけじゃなくて、ブームが去っても続く人生を懸命に生きる一発屋の真の姿を知っていただきたいと思い、書かせていただきました。

 芸人が芸人のことを「こんなにすごいんやで」と声高に解説しているようにも見えてしまうことに、気恥ずかしさや、クソダサいなと思うこともあったんですが、負けても立ち上がる一発屋の皆さんの姿に、どこか自分の人生を重ね合わせて読んでくださる方もたくさんいらっしゃるようで、そういう感想を聞くと、ホンマにうれしいですね。

 ちなみに僕ら髭男爵は現在、地方営業に勤しむ日々です。

 そんな中、僕はこうして執筆業でも褒めていただけるようになり、相方のひぐち君は、15年にワインエキスパートの資格を取得して、ワイン関連の仕事もチョロチョロ入り出しているみたいです。“お笑いちゃうんかい!”という思いも、なくはないですが、そうやって、できることをやりながら年を重ねていって、70歳、80歳になっても、地方営業で「ルネッサ~ンス!」って、やっていたら、おもろいなと思っています。

山田ルイ53世
1975年、兵庫県生まれ。お笑いコンビ・髭男爵のツッコミ担当。地元の名門・六甲学院中学に進学後、引きこもりになり、中退。大検合格を経て、愛媛大学に入学するも、中退して上京。お笑い芸人の道を歩み、「ルネッサ~ンス!」のギャグで人気を博す。『新潮45』で連載した「一発屋芸人列伝」が「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」作品賞を受賞し、話題に。

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