本好きリビドー(223) (2/2ページ)
一例を挙げると、根津(文京区)。谷根千(谷中・根津・千駄木)と呼ばれ、レトロな面影を残す東京名所の一画だが、江戸時代に「岡場所」(幕府非公認の遊郭)があったことを知る人は少ない。
玉の井は昭和30年代前半まで、現在の墨田区にあった安価な私娼街だった。赤羽は明治の頃、陸軍の施設が相次いで進出したことによって栄えた色街だ。
また本には「RAA」という見慣れぬ言葉が現れる。Recreation and Amusement Associationの頭文字を取ったもので、日本語に訳すと「特殊慰安施設協会」。連合軍占領下に作られた進駐軍兵士のための慰安所だ。作ったのは日本政府。RAAは亀有(江東区)などにあった。
娼家だった建物が現存している場所もある。見る人が見れば当時の娼館とすぐに分かるそうで、そうした建物の写真も掲載されている。
最先端のマンションが立ち並ぶ東京の景色とは思えず、タイムスリップしたような錯覚に陥る。だが、それも東京なのだ。時代の変遷の中で消えていった色街の薫りが、リアルに立ち上ってくるような1冊である。
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)