嗅覚と方向感覚に関連性。ニオイに鋭い人ほど方向感覚が優れているという研究結果(カナダ研究)
嗅覚が鋭い人は、例えばガス漏れなどをいち早く察知することができるかもしれないが、その鋭さ故にちょっとしたニオイが気になって気が散ってしまうなどのデメリットもある。
だが新たなる研究で、嗅覚の鋭さのメリットが1つ増えたようだ。
実際に嗅覚は、味覚から記憶にまで関係するとても大切な知覚の1つだが、今回、鋭い嗅覚は方向感覚にも関係していることが明らかとなった。
鼻が利く人ほど方向感覚に優れている可能性が高いというのだ。
・嗅覚と方向感覚の関係性を調査
カナダ、マギル大学の研究によると、嗅覚と方向感覚はつながっているそうだ。
これまでも、その可能性が疑われたことはあったが、それがようやくはっきりと証明されたわけである。
研究では、参加者57人にバーチャルの町を歩いてもらうという実験を行った。その際、まず各自に20分間そこを散策してもらい、町中の作りを覚えてもらった。それが終わってから、ある場所からある場所への行き方を質問した。
また40種類のニオイを嗅いでもらい、それが何のニオイなのか当ててもらうというテストも行った。

image credit:McGill University
・嗅覚と方向感覚は脳の同じ領域を刺激している
これらの結果、ニオイ当てテストで成績がよかった人ほど、散策テストでの成績がいいことが判明したのである。
2つのテストは一見何の関係もないように思える。しかし、実はどちらも内側眼窩前頭皮質(mOFC:脳の前頭葉の中でも、眼窩の上にある部分)と海馬という脳の同じ領域を刺激している。
これまでの研究からは、mOFCの左側が厚いほど、空間記憶が向上し、海馬の右側が厚いほど、嗅覚が鋭くなることが分かっている。
また研究論文で述べられているように、「mOFCの厚みは、空間学習のミスの少なさとニオイの識別の精度」に関係している。つまり嗅覚と空間を把握する能力にはつながりがあるのである。

・前頭葉に障害が起きると、嗅覚と方向感覚に影響
なお今回の研究では、フォローアップとして脳障害の研究も行われた。
ここでは、前頭葉(mOFCに影響する部位)の損傷によって空間記憶と嗅覚に機能障害を抱えるようになった人と、そうでない人とが比較された。
その結果、mOFCの機能障害が、ニオイの特定および空間記憶の力に影響することが証明された。
じつはこの事実がはっきり示されたのは初めてのことだ。
mOFC機能障害のある患者は、標準的な神経心理学テストで、そうでない人と同じような成績を出す。そのために、これらの障害は一般的な認知機能障害によってはこれまで説明できないものだった。
こうした結果から、我々の祖先についても洞察を得られるかもしれない。嗅覚系と海馬系の並行進化のルーツを暗示しているかもしれないからだ。
太古の時代、風に乗って漂ってくる野生動物のかすかなニオイを嗅ぐことができれば、近くに食事や危険があると察知でき、生存には大いに有利だったろう。
だからもし、何か迷うことがあったら鼻が答えを知っているのかもしれない。
この研究は『Nature』に掲載された。
※どんな研究でもそうだが例外もある。そしてまた別の研究で違う結果になることもある。 女性の方が嗅覚が鋭いという研究結果がある一方で、方向感覚は男性の方が鋭いという研究結果もある。
なので嗅覚が鋭いのに方向音痴なのはなんでだ?と言う人も少なからず存在するだろう。
References:Good spatial memory? You’re likely to be good at identifying smells too | Newsroom - McGill University/ written by hiroching / edited by parumo