シャルリ・エブド襲撃事件で射殺されたテロリストはどのように埋葬されたか (2/2ページ)
犯人の一人が葬られたフランス北部ランス市の市長はこの埋葬にあたって「街の平安が脅かされることを避け、この悲劇を早く乗り越え次の段階へ進むために迅速な埋葬を決断した」と語っている。
■なぜフランス政府は国内の埋葬を指示したか
現在のフランスの法律では地方自治体が墓地を用意し、埋葬する義務を負うとしている。自治体が責任をもって墓を用意する期間も決まっている。死者がどこの市町村に埋葬されるかは、その人の亡くなった場所、その人の最後の居住地、もしくは家族墓がある場所、などで決まる。遺体は埋葬される権利のあるいずれかの市町村長の許可を得て市の墓地に埋葬する。そのため、日本でいう地方自治体法のような法規の中には埋葬に関する規定が詳細に定められている。
自分の街にテロリストが葬られることに対する市民感情がどうあれ、法律が地方自治体の埋葬にあたっての役割を細かく明確にしてい以上、フランス政府は法治国家として法を根拠に遺体の埋葬を認めるようにと各自治体に指導する必要があったのだ。
■なぜフランスでは墓地埋葬法制が整ったか
かつてはフランスでも葬儀や墓地は国や自治体ではなく教会の管轄で、墓地も教会の敷地内にあったが、都市計画的な要因や政教分離のため、徐々に自治体が墓地を用意するようになっていった。19世紀には教会の介在しない「市民葬」とよばれる葬儀も登場した。
そういった流れの中で「遺骸は誰のものか」「葬儀の方法は誰が決めるのか」と法律上の盲点も明らかになり、これが徐々に新しい時代の埋葬に関する法律を細かく整備するきっかけとなっていったようだ。現在のフランスでは多くの人は教会で葬儀をし、公営墓地に葬られる。
■一方で日本の墓地と埋葬の法律はというと
日本の墓地や埋葬の法律はどうなっているのか。日本では墓地を提供する役割の大部分は寺社が担っており、自治体が墓地を用意する動きはない。また、民法は子供が親を供養する義務は定めておらず、また墓地埋葬法にも誰が埋葬をしなければなけないという義務規定はない。身元がわからなかったり、罪を犯して家族が引き取りを拒否した遺体は、行政が埋葬している。
■墓標のない墓
テロリストをフランス国内に葬るにあたって市民の大規模な反対運動があったという報道は見当たらない。行政もテロリストの埋葬についても例外は作らなかった。
サイード・クワシの妻の弁護士が、埋葬の後にマスコミにこう語っている。「奥さんは今、ほっとしています。夫が慎重に尊厳をもって葬られましたから。」棺を収めるために掘った穴は、埋葬後その上の芝生さえも元あったように整えられたという。墓標もない墓の場所は彼らの家族しか知らない。