遺伝子編集で唐辛子のようにピリっと辛いトマトを作り出す試み(ブラジル・アイルランド共同研究)
意外なことにトマトの歴史はそんなに長くない。”食用”として食べられるようになったのは、200年ほど前だと言われている。
もともと観賞用だったものが、食用としてヨーロッパに広まったのは18世紀頃。日本に伝わったのは江戸時代後期だ。
その後様々な品種改良を経て、現在市場には甘くておいしいトマトが出回っている。
フルーツトマトなんかもう、果物に近いぐらいの糖度で、トマトは果物寄りに向かっていくのかと思いきや、そうでもなかった。
ブラジルとアイルランドの研究者が、遺伝子編集ツール「CRISPR-Cas9」で世界初となる唐辛子のようにピリッと辛いトマトを作り出そうとしているのだ。
・トマトが持つカプサイシン生産遺伝子にスイッチを入れる
『Trends in Plant Science』に掲載された研究では、トマトが持つカプサイシン生産遺伝子にスイッチを入れる方法が提案されている。
カプサイシンは唐辛子にピリリとした辛さを与えている成分であるが、トマトの遺伝子を解析した結果、これを作り出す遺伝子がトマトにも存在することが明らかになった。
研究論文で提案されているゲノム編集手順に従えば、唐辛子のようなピリッとした辛さを持つトマトを作れるはずだという。

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・本当の狙いは、生産が難しい唐辛子の改良
じつは研究者の狙いは、珍しいトマトを作ることではなく、唐辛子の改良である。
トマトはバイオテクノロジーによる操作に対して素直に反応するモデル種だが、唐辛子は育てるのにかなり特殊な条件が必要になるうえ、辛さがばらつくことも多いことで知られている。
しかも1ヘクタールあたりの唐辛子の生産高は4~5ヶ月で3トン程度だが、トマトなら120日たらずで110トンも作ることができる。
もし唐辛子と同じような辛さをトマトで実現できれば、唐辛子よりも育てるのが簡単で、30倍もの生産高が期待できるようになるのである。
・いつかピリリと辛いトマトが出回る日がくるかも!?
16世紀の大航海時代、ヨーロッパ列強は唐辛子の辛さを求めて世界各地に船を送り、植民地化や略奪を行なった。
だが、この技術が当時存在したとすれば、そうした悲劇も防げただろうと、著者の1人であるサンパウロ大学のラザロ・E ・P・ペレス(Lazaro E.P. Peres)氏は冗談めかして話す。
唐辛子トマトはまだ実際には作られていない。だが新しい方法を繰り返すことで、見た目が唐辛子のようなトマトを作ることには成功している。

LAZARO E.P. PERES
この手順をさらに繰り返すことで、近いうちにピリリと辛いトマトの誕生が期待できるかもしれない。
References:Capsaicinoids: Pungency beyond Capsicum: Trends in Plant Science/ written by hiroching / edited by parumo