レジェンド漫画家・弘兼憲史、『島耕作』はなぜモテるのか?

日刊大衆

レジェンド漫画家・弘兼憲史、『島耕作』はなぜモテるのか?

 今年で連載35周年を迎える『島耕作』シリーズをはじめ、昨年、フジテレビでもドラマ化された中高年恋愛漫画『黄昏流星群』。その作者こそ、弘兼憲史氏だ。1月14日まで東京・有楽町マルイで開催された「島耕作『超』解剖展」では、作品を振り返る展示や超レアグッズが展示。その会場で、弘兼氏が小誌に驚きの構想と人生で役立つ極意を語った!

 バブル時代幕開け直前の1983年、マンガ誌『モーニング』で連載が開始された『課長島耕作』。以降、『部長~』『取締役~』『常務~』『専務~』『社長~』と、島とともにタイトルも“昇進”し、現在は『会長~』として続いている。

「島は平社員から会長まで上り詰めましたが、彼自身の手腕や実績のほか、周囲の人間の助けがあって難局をうまく乗り切ったことも、出世の重要な要因でした。助けを得るのに大事なのは、“この人を助けてあげたい”と周囲に思わせる性格でしょうね。だって、あまり憎たらしいことばかりを言うような人を、誰も助けたくないじゃないですか。島はとにかく、下手に、謙虚に生きています。偉くなっても驕らないし、偉そうにしない。部下に高圧的に出たり、実力者に媚びへつらったり、相手によって態度を変えることもない。常に平等。会長になっても、その姿勢を貫いています。

 出世は、下からの押し上げと上からの引き上げの両方があって実現します。双方にうまく好かれてこそ、ということですね。一方で、現実社会では裏工作をして出世する人がいるのも事実。そうやって成功しても、軽蔑されるような人柄では……」

 また、島の出世のキーパーソンとして描かれるのが、女性の存在である。なぜ、島の元には女性が吸い寄せられるように集まるのか。

「島は出世をあまり望んでおらず、周囲がなんとなく押し上げてくれます。同様に、女性に関しても、実は島自身から口説いたことは一度もないんです。女性から寄ってきて、自ら去ってゆく。切り捨てるようなことはしない。そしてまた次の女性がやってくる……と、話を作るのには都合のよい展開だから、と言ってしまえばそれまでですが(笑)。そんなモテっぷりを現実で真似しようと思っても、無理でしょう(笑)。ですが、実践できることもあります。まず、島同様に、平等に接し、誠実で嘘をつかず、偉そうにしないこと。あと、モテに重要な要素は、清潔感と、ガツガツせず爽やかに振る舞うこと」

■中山美穂や佐々木蔵之介でドラマ化された『黄昏流星群』

 島が現実離れしたモテっぷりを発揮する一方で、『黄昏流星群』では、必ずしも成功しない中高年のリアルな恋愛事情が描かれている。

「相手を好き過ぎてってことが、男にはありますからね。でも、好きでもない相手とはデキちゃったり……。そうした、誰でも経験があるだろうエピソードを盛り込んでます。もともと、『黄昏流星群』は自分と同世代に向けて描き始めました。それに、自分がこうだったらいいなという“妄想”もストーリーに生かしています。だから私が50代、60代と年を取るごとに、主人公の年齢も比例している。今は私が70代なので、年寄りの恋愛を描いていますが、もちろん、80代でも続けたいですね。

 昔は年寄りの恋愛が珍しかったでしょうが、今は“人生100年時代”。まだまだ元気な人も多いですから、“年寄りでも、まだ恋愛できるぞ!”という希望を与えたいと思っています。ですが、“恋愛の形”って世の中で、もう描き尽くされてしまっているんですよ。でも、読んだ人をビックリさせたい。だから、少し前には、おばあちゃんの世話が恋愛に発展するという話を描きました。原稿を受け取った編集部が騒然としたそうです(笑)」

 仕事に恋愛に邁進する、弘兼作品の登場人物たち。彼らがイキイキと人生を謳歌できるのは、弘兼氏自身が、立ち止まることなくエネルギッシュに生きているからにほかならない。

「今は、『島耕作』の新たな題材として、国際リニアコライダーについて描いています。政府と財界が、世界中の量子学者を日本に集めて、岩手県にシリコンバレーのような新たな都市を作るという計画を立てており、その取材もしてきました。そういった現実社会の最新技術から、社会問題や事件まで、常にアンテナを張っています。いつも“ネタになるのでは”と考えながら世の中を見て、ネタになると思ったら一気に調べて描く、というやり方です。現在72歳ですが、幸い健康上の問題点はありません。だから『島耕作』に終わりがあるならば、“自分が描けなくなったとき”です。それまでは、たとえば自分が入院したら、“入院島耕作”を描くかもしれませんね(笑)」

 島耕作流、いや、弘兼憲史流の生き方を見習うべし!

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