「ジャニーズ辞めて大正解!」稲垣吾郎の“俳優力”に感服!『半世界』

配給/キノフィルムズ 2月15日よりTOHOシネマズ日比谷ほかで公開
監督/阪本順治
出演/稲垣吾郎、長谷川博己、渋川清彦、池脇千鶴、石橋蓮司ほか
国民的人気アイドル『SMAP』の“メンバー”だった稲垣吾郎。本格俳優としての力量が試される昨今である。若いようで、すでに45歳だもの。
『十三人の刺客』(10年)での狂気の暴君役には驚かされたが、今回は逆に炭焼き職人という役柄の珍しさに、長年のファン以外の中高年層にも十分興味を抱かせる。おまけに監督が『どついたるねん』(89年)、『顔』(00年)など、ファンの多い阪本順治だもの。どんな化学変化が起こるか楽しみに鑑賞したら、これが素晴らしい! 斬新な題名(説明すると長くなる)に惹かれ、ぜひ観てほしい。
山間の町、家業である備長炭を焼く紘(稲垣)は、自衛隊を辞めて帰郷した瑛介(長谷川博己)のことを知る。中古車販売を営む光彦(渋川清彦)にも声を掛け、幼なじみで“不惑”間近の齢に達した3人は久々に酒を酌み交わす。過去のこと、家族のこと、そして仕事のこと、彼らの心に去来するものとは…。
これがホンモノの“おっさん映画”
阪本作品はこれまで劇的な要素が多かったが、今回は淡々として、静謐(せいひつ)と言えるほど。稲垣吾郎の炭焼き職人ぶりにもまるで違和感がない、というより、うっすら髭をたくわえた“土の匂い”のする男になっている。かといって職人気質あふれる入魂の匠、というふうではなく、親の仕事を“別に継がなくていいゾ”と言われて、逆に反発してみたものの…と告白するように、やや惰性で炭を焼いている風情もよく出している。一方、元自衛官を演じる長谷川も、朝ドラ『まんぷく』のイメージとは違って、暴力シーンでは凄みさえ見せる。逆に渋川は滑油的存在だが、時には鋭いことも言うナイス・キャラが立っている。この魅力的な男優たちの化学反応が、人生の折り返し点で自分を見つめ直す映画へと昇華してゆく。
稲垣が友人の突然の訪問に「何だよ。これから(カミさんと)セックスしようとしてたのに…」という冗談っぽいセリフがリアルだが、阪本作品らしくエロスは希薄。ただ、しっかり者の妻を演じる池脇千鶴が、触れんば落ちん、の風情でなかなかイイ。愛妻弁当で“いたずら”する茶目っ気も素敵だ。彼女は20代半ばの『ジョゼと虎と魚たち』(04年)で“完脱ぎ”していたが、あのころよりも、この“脱がない”熟女人妻役の池脇にソソられたりして。
39歳という中途半端な年齢の中年男たちの奏でる“三重奏”は不協和音を孕みつつ、突発的に生じる理不尽さを描いて、高年世代の心に突き刺さる。映画、テレビで妙に“おっさん”ブームだが、これがホンモノの“おっさん映画”だ!