腹腔鏡手術、うっかりミス…医療事故「危ない病院」の見分け方
近年多発している医療事故。なぜ起きるのか、その対処は? 納得して治療を受けるための選択法を大公開!
どうせ終末医療を受けるなら、地元の「有名な大病院」なら安心だと思う読者は多いことだろう。しかし、現実には、こうした有名病院でも医療事故はたくさん起きている。
『死ぬときに後悔しない医者とクスリの選び方』(アスコム)などの著書もある、岡田正彦新潟大学名誉教授(医学博士)は、「最新の米国の論文で、患者の死亡原因の1位ががん、2位が心筋梗塞、そして3位が医療事故(過剰医療も含む)で、脳卒中は4位でした。人間のやることですからミスは避けられません。まず医療事故は、それほど身近にあるということを認識してください」と語る。
■連続腹腔鏡死亡事故が…
近年、医療事故として数多く報道されたのが、群馬大学医学部附属病院の「連続腹腔鏡死亡事故」だ。2010年から4年の間に、腹腔鏡を用いた肝臓切除手術を受けた患者のうち、8人が相次いで死亡。他の開腹手術でも、10人の患者が死亡。いずれも同じ医師が担当していた。
内部調査委員会でも「医療の安全を学んだことのない人による、失敗例」と断罪され、担当医は解雇。同病院は「特定機能病院」の承認を取り消され、遺族に損害賠償金を支払うことを公表した。
2014年には、『週刊朝日』(朝日新聞社)の報道などによって、千葉県がんセンターでも同様の事故が起きていたことが明らかになった。同センターでは08年から6年間で、腹腔鏡を使った膵臓や肝臓手術などで11人の患者が相次いで死亡。少なくとも7人は同じ執刀医が担当していた。千葉県病院局は「患者が術後に短期間で亡くなる事例が続いたことを重く受け止め」、第三者検証委員会を設置した。
■外科手術も人工知能を使う時代
「腹腔鏡手術とは、手術部位に小さな穴を空けてカメラ(腹腔鏡)を入れ、執刀医がモニターを見ながら鉗し子を入れて行う手術。近年は“ダヴィンチ”という手術支援ロボットを使い、4本のロボットアームを遠隔操作して行う手術が浸透してきました。“ダヴィンチ”の新型は1台3億円。外科手術も人工知能を使う時代に入っています」(最新医療に詳しい外科医師)
先の2例は、まさにこの腹腔鏡での手術ミスだった。「軽自動車しか運転できない人に、いきなりF1マシーンや、戦闘機を操縦させても無理というもの。開腹手術と比べて術後の痛みも少なく、傷も残りにくいんですが、腹腔鏡の操作は、かなり難しい。カメラには死角があるし、手に伝わる感触も少ない。手術中に想定外の出血が起きても対処がしにくいんです」(前同)
胃がん、大腸がん、泌尿器がんなどは、この手術方法も普及してきたが、「やはり、肝胆膵(肝臓、胆のう、膵臓)手術は、開腹したとしても難しい手術です。それを腹腔鏡で済ませるといっても、あまり賛成しませんね」と、『名医を疑え!良い医者、悪い医者の見分け方』(双葉社)著者の近藤誠医師は明かしている。
それでも手術をやるという“モンスター医師”が世にはいるらしい。
「多少の死亡例があっても、最新医療の実績を残したいという、功名心旺盛な医師も世間にはいます。大学病院などでは医師同士が実績を競う傾向があります。死亡例が続いても学内カンファレンス(協議会)にも取り上げられず、上司は無関心。騒ぎにならない限り、同じ学内の同僚医師も余計な詮索はしないという空気が蔓延している病院もあります」(全国紙社会部記者)
■絶対に許されないミスも…
医療ミスは、高度医療ばかりだとは限らない。京都大学医学部附属病院では、60代女性患者に与えた点滴剤の調合ミス(17年)によって患者が死亡。30代の男女2人の薬剤師が、点滴液の濃度を通常の1000倍で調剤して処方したことが原因だった。
また同病院では2000年、看護師が人工呼吸器の加湿器に誤って消毒用のエタノールを注入して、入院中の17歳女性が死亡した事故もあった。遺族は損害賠償を求めて訴訟を起こし、最終的に看護師ら4人と大学に、2800万円を支払うよう命じられた。
こうした絶対に許されないうっかりミスといってもいい事故は、東京女子医科大学病院でも相次いでいる。2014年にあごの下の腫瘍摘出手術を受けていた男児(2)が、術後3日で死亡。術中に使用した鎮静剤プロポフォールが小児への使用が禁止されている薬剤で、その大量投与が死亡原因とされた。
この事故に関し、『クローズアップ現代+』(NHK)の取材で、同院病院長は「本当に申し訳ないことだと思います。2度とあってはならないことだと思います」とコメントした。
また同年には、脳腫瘍の治療で入院していた40代女性に、発作抑制の抗てんかん薬を飲むように指示したが、患者は死亡。通常の16倍の濃度で薬剤を処方したことが原因、と新聞各紙で報じられた。
院内の連絡不徹底で、患者が死亡したという事例もある。2018年6月8日、千葉大学医学部附属病院は会見を開き、「患者9人でX線CTの画像診断報告書の確認遅れがあり、うち4人の治療結果に影響を及ぼし、2人が死亡した」と発表した。死亡した2人については、新たにがんを認識した段階では、すでに手術も不可能な状態だったという。同院院長は「深くお詫び申し上げる。全力で再発防止に務める」と謝罪した。
■医療過誤の裁判例は…
医療ジャーナリスト・牧潤二氏は、こう語る。「医療過誤と思われる裁判例は、かなりの数あります。最高裁の最新データ(17年)ですと、年間に医療過誤の訴訟提起件数が857件。近年、増加傾向にあります。全国の病院数はおよそ9000ですから、10病院で1件の訴訟を抱えたことになります。訴訟がどうなったかのデータもあり、それを見ると約2割は原告(患者側)勝訴。また和解で賠償金を得ている例も多いです」
医者の対応に不安を感じたら、ICレコーダーなどで会話を録音しておくことが重要。だが、仮に裁判で勝てたとしても、死者は生き返らない。危険な病院を見分ける方法はないのか。前出の岡田氏は語る。
「過去に医療ミスがあった=危険な病院とは限りません。事故が起きた後にしっかりと対応したか、なぜ医療過誤が起きたのかを患者や家族にしっかりと説明したかが重要。それができない病院が問題なんです。私のところに相談に来る患者からの苦情のほとんどは、“医師が話を、ちゃんと聞いてくれない”“説明してくれない”ことに尽きます。これができれば患者と信頼関係が築け、ミスがあっても訴訟になることは少ないと思います」
『みつばちクリニック』(大阪府)の橋本惠院長(医学博士)は、こう語る。
「高度医療の場合、治療はチームで行います。名医を探すよりは、“病院のレベルを見る”という方針で臨まれるほうがいいでしょう。有名な医師が目当てでその病院に行っても、実際に手術をするのはお弟子さんというケースは多いようです。“病院のレベル”の判断ですが、大きな病院では症例数をHPで公表しています。症例が多ければ、熟練度が高いと見ていいでしょう」
ある日突然、自分や家族が当事者になってしまう可能性もあるのが医療ミス。そうならないための、病院選びが何より重要だと言えそうだ。