AIロボットが生殖活動を行い子供を作り、進化する自然選択システムを研究する科学者たち

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AIロボットが生殖活動を行い子供を作り、進化する自然選択システムを研究する科学者たち
AIロボットが生殖活動を行い子供を作り、進化する自然選択システムを研究する科学者たち


 バクテリアもウイルスも、昆虫も爬虫類も哺乳類も、自らの子孫を残すようプログラムされている。地球上に存在する生きとし生けるものなら、必ず自らの複製を作るのである。生殖活動というやつだ。

 だがロボットはそれをしない。今のところは・・・でも近い将来、彼らはそれを学ぶことができるかもしれない。

 進化ロボット工学という分野がある。機械が環境に適応したり、生物のように自分の複製を作れるようなロボットを研究する分野だ。

 ある日、2体のロボットが自分たちの遺伝子(=プログラムコード)を組み合わせて、3Dプリンターで子供を作れるようになるかもしれない。

 それは、人間のエンジニアには思いもつかない、美しい形態と行動様式を持つ存在になるかもしれない。
・進化を経て誕生した奇抜なデザインの足

 それはあまりにも突飛で、しかも人々を警戒させるアイデアかもしれない。だが、進化ロボット工学者はすでにそうした設計を考案している。

 たとえば、オーストラリアの研究者は昨年、ランダムに生成された20種の形状からロボットの足を進化させるという実験を行なった。

 そのシミュレーションでは、それぞれの足が各種の路面を歩く際のうまさ――つまり「適応度」をチェックする。

 そして、そこから一番評価の高かった足を選び出しては「交合」させ、似たような見た目の足(子供)を作り出す。

 この過程を何世代も繰り返すと、さまざまな路面にぴったり適応した足が完成する。そのデザインはまともなエンジニアには思いもつかない、奇抜な代物だ。

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image credit:Towards the Targeted Environment-Specific Evolution of Robot Components


・ロボットの突然変異が進化を促す

 従来、ロボットのデザインはエンジニアが決めるもので、それは繰り返し使われるのが常だ。火星ローバーが6輪なのは、それ以前に6輪でうまくいったことがあるからだ。

 しかし、それではたどり着けない境地がある。

 進化のすばらしい点は、しょっちゅうバカらしいアイデアに遭遇することだ。

 合理的なエンジニアに、アリに侵入するキノコなど思いつくだろうか? これはランダムな突然変異と自然選択を何世代も繰り返した結果による、凡庸さとは真逆の戦略である。

 そして自然界と同じく、ロボットの進化をうながすのも突然変異だ。

 鍵を握るのは変化である。2つの生命が子供を作るとき、両親の遺伝子が組み合わされるが、そこに突然変異が忍び込むことがあり、子供に少し変わった特性を与える。

 その特性によって有利になることも不利になることもある。それが有利なものであれば、その子供は配偶者に恵まれ、自分の遺伝子を次代に伝えるだろう。

 だが、それが周囲の環境に合っていなければ、その子は自分の子を残せず、次の世代に突然変異遺伝子が伝わることはない。

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photo by pixabay

・突然変異によって得られる多様性

アムステルダム自由大学のコンピューター科学者ガス・エイベンは、モジュールをつなぎ合わせた単純な2体のロボットを作り、両者のカラーリングの”ゲノム”を合体させるという実験を行なった。

 このとき、生物の突然変異をまねするために、ロボットのゲノム情報にノイズをくわえ、子供が両親の完全なコピーにはならないようにした。

 すると、完全に青と完全に緑の両親から、青と緑にくわえて白いモジュールを持つ子供ロボットが誕生した。

 こうした突然変異を組み込んだ新しい開発手法は、ロボットの設計にこれまで見られなかった創造性をもたらすものだ。

 「これによって豊富な多様性が得られる。それも普通なら探られないような設計を探求するパワーをともなって」と、先述した進化する足システムを開発したデビッド・ハワードは論じている。

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photo by pixabay

・自然選択でニッチへの適応度を高める

 その狙いは、特定の環境ニッチにロボットを適応させることだ。

 たとえば、ジャングルを自動で探検してくれるようなロボットを作りたいとする。この場合、ロボットのアルゴリズムは、生い茂る木々の中を効率よく移動できる方法や形態を制御できなければならない。

 ならば、まずはその環境でロボットをシミュレートすればいい。そして、一番うまくいくアルゴリズムを選択・複製しつつ、それに基づいて微妙に異なる物理的な機体を設計するのだ。

 「我々がやっているのは、シンプルかつ安価な小型ロボットを大量に用意し、それを旅立たせるというやり方だ。その中には、ほかよりはうまくやれる機体がある」とハワードは説明する。

 ロボットが帰還しなければ、適応していなかったということだ。一方、きちんと帰ってこれたロボットには、3Dプリンターを利用して子供を作らせる。そして、その子供にも旅をさせる。

 かくしてロボットの進化は続く――自然選択が機能しているのである。

 ハワードは、こうしたシステムは20年もあれば実用化されるだろうと考えている。

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photo by pixabay

・素材の組み合わせの妙

 既存の3Dプリンターはまだまだ高価だったり、印刷が遅すぎるといった欠点があるが、それでも金属をはじめとするさまざまな素材を扱うことができる。

 大雑把に言って、こうしたロボットが対応できる範囲は、この進化システムが素材をいかにクリエイティブに使えるかによる。

 従来のロボット開発では、どの素材をどこに使えばいいかは、エンジニアが判断することだった。

 だが、進化ロボット工学のシミュレーションなら、形態や挙動以外にも素材の組み合わせを試すこともできる。

 まず各素材の特性を記録したデータベースを構築し、これらの素材をロボットの各パーツに割り当ててみる。もしかしたら、ある環境ではカーボンよりもプラスチックの足のほうが優れた性能を発揮できるかもしれない。

 そして、もしロボットが生き残れたなら、そのときの素材の組み合わせは、割り当てられた作業、すなわち進化論的な意味でのニッチにうまく適応しているということになる。

 これによって、人間の設計者の負担は大幅に軽減されるだろうと、ハワードは話す。

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photo by pixabay

・生殖行動が行えるロボットの反乱はあるのか?

 ところで、このロボットの子作りシステムからは不穏な気配を感じはしないだろうか? そのようなシステムが登場すれば、人類の失墜がまた一歩近づいたように感じられる。

 心配は無用だ。こうした進化システムは、自然選択の原則というルールに従って作られている。海の生物が陸を歩く足を進化させた理由がわかるように、ロボットの系譜が特定の環境に適応した形態や挙動を進化させた理由もわかる。

 結果として生まれるデザインは意外なものかもしれないが、注意深く観察していれば、それが人類に有害なものになることはない。

 もちろん設計者がロボットに人類を駆逐するよう命じていたら話は別だ。マッドサイエンティストが悪だくみをしないことを祈ろう。

 この研究論文は『nature』に掲載されている。

References:The robots that learned to reproduce: Scientists teach AI-powered bots to 'mate' by combining code/ written by hiroching / edited by parumo
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