シャーロット・ランプリング主演『ともしび』(日本初公開中)その(1):杉作J太狼XE「美しさ勉強講座」連載100 (2/4ページ)
そうした場所にも映画館やビデオ売り場はきっとあって、映画館は少なくて、よっぽどの作品でなければかからないから、ビデオスルーとなり、早い夕食を外で食べた帰り道、夕食といっしょに飲んだお酒でほてったからだが海風に吹かれて気持ちよく、ふらっと入ったホームセンターで目にとまったショッキングなDVDパッケージ。見たところで列記されたキャスト、スタッフ、製作された国に思い当たることもなかったのではあるが、酔った弾みとたまには映画でも見たいという気持ちからレジに持っていったらレジの親父が、ふーん、みたいな顔をして言った。
「これ、俺も見たけどおもしろいよ」
家に帰ったら恋人から小包が届いていた。最近、忙しくてあまり会ってない恋人だった。忙しいのは自分でない。彼女だ。もうすぐ誕生日だったのでもしかしたらと包みを開けたら二年ぐらい前にプレゼントした腕時計と、
(さよなら)
と書かれた紙片だった。
窓の外はもう真っ暗で、近くの家からテレビの音が聞こえていた。
遠くで犬が吠えている。
しばらくそうして立っていたのだ。
言葉がなかった。
台所に向かい冷蔵庫を開けたらなにもなかった。冷蔵庫の上に冷えてないビールが一本乗っていた。
そのビールを飲みながらDVDを見た。
犯罪を犯した若い男女が主演のアクション映画で、カーチェイス、カークラッシュが延々展開された。パッケージにあったほど派手なシーンはなかったがしつこく展開されるカーチェイスを見ているとこころがからっぽになっていくようだった。悪い気持ちはしなかった。むしろ、それがいい。
途中からむりやり物語に入ってくる大男がよかった。若い女に逃げられたのだ。残酷でロマンチックで凶暴な男だった。初めて見るこの俳優は本当にこんな人間ではなかろうかと思えた。いや、そんなことはない。彼はきっと俳優なのである。役で汚れた服を着て、顔を汗と脂で黒く光らせてはいるが、ふだんはそこそこの俳優として生活しているのだ。
俺はどうか。
俺もそうなのではないか。