貴景勝独占インタビュー「貴乃花親方の言葉は、強くなれる謎解き」
新大関として迎えた夏場所の5日目に右膝を負傷。残念ながら休場が決定してしまった貴景勝だが、彼のアツい相撲論をお届けする!
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貴景勝光信(たかけいしょう みつのぶ)
本名=佐藤貴信。1996年8月5日、兵庫県芦屋市生まれ。175センチ、170キロ。2014年、貴乃花部屋に入門。同年九州場所、本名の「佐藤」の四股名で初土俵。17年初場所で新入幕し、現四股名に改名。18年11月の九州場所で初優勝し、翌19年1月の初場所で関脇に昇進。同年3月の春場所後に大関昇進が決まった。
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ーー大関昇進伝達式では、「武士道精神を重んじ、感謝の気持ちと思いやりを忘れず、相撲道に精進してまいります」との口上にも注目が集まりましたね。
貴景勝(以下、貴) 春場所が終わった次の日から、自分なりに口上を考えてみたんです。これまで、自分を作ってくれている言葉は何か? と考えたときに、武士道精神、感謝、思いやりという言葉がスッと浮かんできて……。それほど迷うことはなかったですね。
ーー貴景勝関が考える「武士道」とは、どんなものなんでしょうか?
貴 大相撲の世界は、スポーツではなくて、神事の一つだと自分では思っています。「力士」は「力の武士(もののふ)」、武士の一部です。だから、その精神を大切に、自分自身、男らしい人間でありたいとも思っています。そういうことは、小学生のときから父に教えてもらっていました。 あと、自分のモットーとして、「勝っておごらず、負けて腐らず」という言葉があるんですが、相撲で勝ってメチャクチャうれしいときでも、ガッツポーズはしません。勝っても相手に気を遣えるというのが、日本人の昔からの良さであり、日本の心だと思います。ただ勝てばいいというわけじゃない、奥深さが大相撲にはあるんです。
ーー確かに、勝っても負けても表情を変えませんね。それは、「相手への思いやり」でもあるんですか?
貴 はい。口上の中に入れた「感謝の気持ちと思いやり」は母校・埼玉栄高相撲部の部訓でもあります。相撲部での練習や生活を通じて、人間的に成長できたし、その後もいろいろな人に支えられて、ここまで来られたと思っています。そういう気持ちを忘れたくないと、自分に言い聞かせています。 それと、忠義ですね。大相撲の親方、つまり師匠と弟子は、忠義を誓い合う間柄だと思っています。師匠取から受けた恩を真心で返す。それが弟子の務め。 他のスポーツなら“監督と選手”ですが、相撲は“師匠と弟子”。そこに意味があると思っています。大相撲は格闘技の一つかもしれないけれど、“格闘技スポーツ”とは言われたくありません。それを、たくさんの方に知ってほしいし、世界中の人にも伝えたい。それが自分の使命だと思っています。
■スイッチの切り替えが、これからの課題
ーーさて、春場所の千秋楽の栃ノ心関との対戦は、勝てば大関が確定、逆に栃ノ心関は大関から陥落するという厳しい相撲でしたね。
貴 前の夜から相当悩みましたね。「自分がやれることは何か?」と考えてみましたけど、「技」があるわけじゃない。だから、自分が持っている、ほんの少しのものを最大限に使おう……と。自分の最高の武器(押し相撲)を出すだけ出して、あとはなるようになる! つまり「自分を信じてあげる」と腹をくくりました。
ーー栃ノ心関には、小さい頃にかわいがってもらったそうですね。
貴 メチャクチャ面倒みてもらいましたが、土俵上では別です。結果、自分が勝って10勝を挙げて大関当確となったときは、「あぁ、相撲をやり続けていてよかったな……」としみじみ思いましたね。この千秋楽の栃ノ心関との相撲では、自分なりに「つかんだ」ものがあった。この感覚をいつもつかめるように、スイッチのオンオフじゃないですけど、切り替えていくことが、これからの課題ですね。
ーーなるほど。大関昇進については、前の師匠、元貴乃花親方が「よくやった。でも、これからが相撲道の始まりである。健闘を祈る」というメッセージを表明されていましたね。
貴 以前から、師匠のコメントは意味が深いというか……。一つの言葉に、いくつもの意味が含まれていて、一つの言葉だけを捉えては失敗する。まるで謎解きみたいなんです。 何個ものヒントが隠されていて、それが分かるようになれば、もっと強くなる。序二段くらいの頃に言われたことが、最近になって分かるようになったりとか、そんな感じです。まだ分かっていない部分もありますし、答えが合っているかは分からないけど、常に模索しています。「相撲道とは何か?」ということも、教わりました。
ーー具体的には?
貴 先輩に教わったことを素直に聞く。大相撲は昔からの伝統を代々引き継いで、今に伝えていますよね。ちょんまげだって、江戸時代のときの頭なわけです。なんで力士がちょんまげをつけて、土俵に上がっているのか。そういう意味を考えて、相撲を取ることが大切。 もちろん現代風にシステムを変えることも必要かもしれないけれど、時代が変わったといわれても、変えなくていい美しさもある。それが伝統美だと思うし、大切にしていきたい部分ですよね。
ーー新大関としての抱負をお願いします。
貴 横綱となった方を見ていると、大関をさっさと通過する方が多いので、もちろん自分も早く、その地位に行きたい。現状では全然満足していません。 令和という新しい時代に、大関として新たなスタートを切る。力を出し切って、「いいスタートを切れたな」と思えるような場所にしたいです。でも、両親と誓った夢は、まだ果たせていないので、これからも精進していきます!
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5月20日発売の『週刊大衆』ではこのほか、最小兵関取として注目される炎鵬へのインタビューを掲載している。