「名古屋走り」に「茨城ダッシュ」…“ご当地交通ルール”ドライバー県民性

日刊大衆

写真はイメージです
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 各地で後を絶たない危険運転。だが、その陰には「地元民ならでは」の、恐るべきハンドルマナーがあった!

 凄惨な2件の交通事故が、国民の安全への意識を大きく変えている――。4月19日、東京・池袋で87歳男性が運転する自動車が暴走し、母子2人が死亡。さらに、5月8日には滋賀県大津市で、信号待ちをしていた保育園児の列に軽自動車が突っ込み、園児2人が死亡。52歳女性が、交差点で前方確認をしないまま右折し、対向車に激突したことが原因だった。「池袋の事件をきっかけにして、都内では高齢者の免許返納が急増しています。また、滋賀の事故後には、道路環境見直しの声が多数上がりました。日本中で交通安全への意識が高まりを見せているのは確かです」(全国紙社会部記者)

 そんな中、にわかに注目を集めているのが“劣悪な運転マナー”だ。「事故や違反が多い都道府県には、それなりの理由があるといわれています。特定の地域では、当然のように危険運転がまかり通る“悪習”がはびこっているんです」(前同)

 正規の交通ルールとは異なる、その土地ならではの運転ルール。だが、その実態は、事故を誘発しかねない違反運転に他ならない。「その土地のルールを知らないばかりに、他県の人が危険にさらされるケースも非常に多い」(警察関係者)

■ローカルの暗黙ルール「松本走り」

 特に、滋賀の事件の要因ともなった「交差点の右折」には、信じられないような“ご当地ルール”が多数存在する。その代表格が長野県の「松本走り」だ。「これは、直進車がいても強引に右折する、あるいは対向車が左折するのと同時に右折する、というもの。松本には“右折車優先”という独自の暗黙のルールがあり、観光客から“運転が危ない”と悪評が続出したことで、問題視されるようになりました」(自動車ライター)

 交差点で直進車を優先すべきなのは言うまでもないが、山梨県でも右折車を優先するため「山梨ルール」とうたわれている。また、危険な右折を指す、「伊予の早曲がり」(愛媛県)、「茨城ダッシュ」という言葉もある。「どちらも、信号待ちをしている右折車が、信号が変わった瞬間、対向車が進む前に右折してしまう行為を指します。2台、3台と続くことすらあるので、知らない人は、かなり驚くでしょうね」(前同)

 ありえないご当地ルールは、右折だけにとどまらない。ウインカーを出さずに右折左折や車線変更をする「岡山ルール」、黄色信号で止まるどころか加速する「阿波の黄走り」(徳島県)も有名だ。「兵庫県には“播磨道交法”というのもあります。これは姫路ナンバーの運転マナーの悪さを、神戸新聞が自虐的にまとめたもので、県民に問題提起したというのが特徴ですね」(情報誌ライター)

 そんなご当地ルールの中でも、一番悪名が高いのは「名古屋走り」だろう。「強引な右折やウインカーなしの車線変更はもちろん、赤信号になっても交差点に突っ込んだり、右折レーンを追い越しに使ったりと、まさにローカル交通ルールの集大成(笑)。乱暴な運転の代名詞にもなっていますね」(前同)

 文末に掲載している交通事情のランキングを見ても、愛知はワースト二冠。名古屋走りの悪影響がうかがえるような結果になっている。

■運転マナーの悪さを指摘されている地域は…

「これらのローカル交通ルールは、あくまで氷山の一角とも言えます」 こう語るのは、ある自動車評論家だ。さらに続ける。「これといった名称がなくても、運転マナーの悪さを指摘されている地域はあります。たとえば、大阪や北海道も昔から“運転が乱暴”だと、他県の人から怖がられていましたからね」

 この言葉を裏づけるのが、2016年にJAFが全国のドライバーを対象に行ったアンケートだ。自分が住んでいる都道府県の交通マナーについて、「悪いと思う」あるいは「とても悪いと思う」と回答した人が最も多かったのは、愛知でも大阪でもなく、香川県(80%)。それに、徳島県(73.5%)、茨城県(67.2%)が続いた。

 日本全国の交通安全事情は、さらに悪化の一途をたどっている。JAF東京支部によると、運転マナーの低下は、もはや一部地域の問題ではなくなってきているというのだ。「半年ほど前のアンケート調査では、『信号機のない横断歩道で、歩行者がいるときの一時停止』の実施率が全国平均8.6%でした。これはつまり約9割の車が、歩行者を無視しているということで、明らかな交通違反。全国的なマナー低下の傾向を示すものです」(JAF東京支部広報)

 もはや全国どこでも、運転マナーに期待せず、自分で安全を確保する必要があるということかもしれない。交通評論家のケニー佐川氏は、こう提言する。「運転者も歩行者も音に敏感になってほしい。異常な音を耳にしたとき、即座に動ければ、危険を回避できる可能性がありますから」

 令和時代、交通マナーの向上を願うばかりだ――。

■都道府県別交通事情ワーストランキング

●「交通事故」発生件数※1

1位 愛知(3万5258件)
2位 大阪(3万4382件)
3位 東京(3万2590件)

●「安全運転義務」違反件数※2

1位 愛知(3万7594件)
2位 大阪(3万2435件)
3位 福岡(3万1728件)

●違反別発生件数ワースト都道府県※3

信号無視 静岡
速度違反 兵庫
酒酔い 埼玉
歩行者妨害 神奈川
一時不停止 兵庫

※1警察庁交通局の統計(平成30年)より ※2※3交通事故総合分析センターの統計(平成28年)より

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