ハワイで人間の脳に侵入する寄生虫の感染者を確認。保健局が注意喚起
Punlop Anusonpornperm / Creative Commons Attribution 4.0 Internationa
これからハワイでバカンスを過ごす予定を立てている人がいたら気をつけてほしい。ハワイ保健局が、人間の脳に侵入する寄生虫が増加していると注意喚起をしているからだ。
最近でもハワイを訪れた旅行者の3人にこの寄生虫の感染が確認されたという。
当局の発表によると、この3人はアメリカ本土からハワイに渡航したまったく無関係の人たちで、今年に入ってから5件目のことだという。
なお寄生虫感染症は昨年では計10件、2017年には17件が確認され、寄生虫の増加傾向が現段階でも続いていることが窺えるそうだ。
・ネズミに寄生し、ナメクジを経由しまたネズミに戻る広東住血線虫
問題の寄生虫は広東住血線虫(Angiostrongylus cantonensis)という。英名をラット・ラングワームといい、その名の通り本来はネズミの肺に寄生する寄生虫だ。
だが、一生涯を肺の中で過ごすわけではない。メスは肺の中で産卵し、孵化した幼虫は、咳によってネズミの喉にまで押し上げられる。そしてそこで飲み込まれ、やがてフンに紛れて体外へ排出される。
すると、フンを餌にするカタツムリやナメクジに食われ中間宿主に寄生。今度はそれをネズミが食べる。
こうして首尾よく別のネズミに引っ越した幼虫は、脳に移動してそこで成長し、また肺を目指す。あとはこのサイクルの繰り返しだ。
・広東住血線虫が人間に寄生する理由
ネズミを宿主とする広東住血線虫だが、稀に人間に感染することがある。一番よくあるパターンは、サラダなどに感染した中間宿主のナメクジが付着しており、これをうっかり食べてしまうというもの。
当局では、最近人間への感染が増えた原因は、寄生虫が感染することが多い外来のナメクジモドキ(semi slug)が爆発的に増えていることと関係するのではと考えている。

ナメクジモドキLuis Daniel Carbia Cabeza / Creative Commons
万が一、幼虫が人間に感染してしまった場合、ネズミのときと同じく、それらは脳を目指す。だが、そのほとんどが最終目的地である肺に到達することはなく、大抵は中枢神経系(脳と脊椎)のどこかで野垂れ死ぬ。
また寄生虫に侵入されてしまった場合であっても、必ずしも症状が出るとは限らず、自然に治ることもある。
だが、そのせいで頭痛、頸部剛直、チクチク感、痛み、微熱、吐き気、嘔吐といった症状が現れることもある。ひどいケースでは、神経の損傷、まひ、昏睡、さらには死に至ることもあるため甘く見ることはできない。

CDC - DPDx - Angiostrongyliasis
・もし感染してしまったら?有効な治療はなく予防が大切
もし感染してしまった場合、診断は難しいという。
血液検査ではわからないからだ。
ハワイ当局が実施している方法は、患者の脳脊髄液などを採取して、そこに寄生虫のDNAが含まれていないか検査(ポリメラーゼ連鎖反応試験)するというもの。注射器でちょっと血を抜くような簡単なものではない。
しかも、寄生虫感染がはっきりしたとしても、今のところ有効な治療法はなく、寄生虫駆除薬が効くのかどうかもよくわかっていない。
患者にできるのは、症状に耐えながら、寄生虫が死んでしまうのを待つことだけなのだ。
そのため、感染を未然に防ぐことがもっとも大切なこととなる。
ハワイ保健局は、渡航者や住人に対して、食材は密閉された容器で保管し、食べる前にしっかり洗うよう注意を呼びかけている。
昨年オーストラリアで庭にいたナメクジを悪ふざけで食べた男性が広東住血線虫に感染して亡くなったというニュースは記憶に新しい。
・悪ふざけでナメクジを生で食べた男性が寄生虫に感染。8年の闘病の末に死亡(オーストラリア) : カラパイア
とにかくナメクジやカタツムリを素手で触ったりしないようにしよう。間違っても食べようなどと思わないことだ。
References:Hawaii warns tourists of parasitic worm that can burrow into human brains | Ars Technica/ written by hiroching / edited by parumo