円安でも輸出は増えない アベノミクスが経験した大誤算とは (2/3ページ)
一方で、輸出の量が増える、「実質」の輸出増は、円安によって起こることはなかった。「円安を促すことで輸出数量を増やし、それによって国内生産が増えて経済成長率が上がる」というシナリオを描いていた政府の目論見は外れたのだ。
■もう「ドル円相場」と「輸出数量」は関係がないでは、なぜ円安が実質的な輸出増に結びつかなかったのか。
その理由の一つは、日本企業が円安の影響を輸出商品のドル建価格に還元しなかったことだ。
2013年から2014年の時期は、まだ2008年のリーマンショックの影響が色濃く残る時期。リーマンショックの際の急激な円高で大損失を出した日本企業は、たとえ円安になったとしても、「1万ドルの商品が100万円から120万円になったから、9000ドルに値下げしてその分たくさん売ろう」という思考にはならなかった。
買い手側からすると円安になる前も後も商品は1万ドルのままだから、輸出量が増える要因にはならなかったのだ。
もう一つの理由は、輸出物品の変化だという。
当時の日本の輸出物品の主役は、白物家電のような「価格を下げれば売り上げ数量が増える」といった性質のものから、高付加価値製品にシフトしていた。こうしたものは価格を下げたから売れるというものではなく、高くても必要なら買われる類のものだ。
だから、円安になっても輸出量が増えないのは、リーマンショックの後だったからというわけでもない。輸出物品の構成が、円安の恩恵を受けにくくなっているということだ。
実際、日本銀行が2018年に公表した「輸出のための為替感応度」の試算でも、ドル円相場と輸出数量の間にはもうほとんど関係がなくなっているという。「円安になれば輸出が増える」という、一般的に信じられている経済のセオリーは、もう完全に過去のものなのである。