ノーベル生理学・医学賞受賞者の大村智博士、日本僑報社の最新刊『屠ユウユウ 中国初の女性ノーベル賞受賞科学者』に推薦文を寄せる (2/3ページ)

バリュープレス



「ゆうゆう」という赤ん坊の泣き声に、父は「呦呦(ゆうゆう)と鹿鳴き 野の蒿(こう)を食(は)む」という古詩の一節を思い、その女の子を呦呦と名付けた。

それからおよそ40年後、薬学者となった彼女がマラリア薬開発において、まさにこの詩に詠われる「蒿」という植物の研究に没頭することになったのは不思議な運命と言わざるを得ない。

とは言え当時は粗末な実験施設しかなく、研究者の体を危険から守る防護設備も十分ではなかった。そんな過酷な状況で、彼女らは自らの体を犠牲にしながら砂を噛むような実験を続けた。ただそこにあったのは献身的な情熱だった。

1600年前の古代中国医学書から着想を得てアルテミシニンを発見、マラリア治療剤を開発した中国女性科学者の足跡を追う――。

大村智博士「推薦の言葉」全文は下記の通りである

「推薦の言葉」 屠ユウユウ氏の研究執念 (ユウは口へんに幼)

この度の屠ユウユウ氏の伝記書籍の発刊を心から祝し、改めて屠ユウユウ氏の研究にかけてきた執念に敬意を表してお祝いのメッセージとします。

屠ユウユウ氏が歩んできた道は、研究者としての根気と熱意、そして何よりも常に変わらぬ真理の発見への執念そのものだったと思います。その生き方を支えた最大の源泉は、熱帯地方で蔓延するマラリアという重度な感染症から人を救いたいという人類愛でした。

そのような研究人生の中でも、特に私に共鳴を抱かせたのは、おびただしい薬草の中から人に役立つ薬草を求めて未知の領域に切り込んでいった研究者の魂でした。私も人に役立つ微生物由来の有機化合物を発見するため、未知の科学領域での闘いに明け暮れ、そしてまた私も熱帯地方の重度な感染症として恐れられていたオンコセルカ症、リンパ系フィラリア症、疥癬などの特効薬に結びついた有機化合物の発見に至りました。

中国と日本と遠く離れた土地で研究してきましたが、偶然にも屠ユウユウ氏と私は科学者として同じような境遇の中で苦難の数々を乗り越えてきたことを知りました。そして一つの科学の成果にたどり着き、一緒にノーベル賞を受賞できたことは奇跡であり感動的でした。
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