だがちょっと待ってほしい。植物に意識があるという風潮に論文で反論する研究者(米研究)
Little Shop of Horrors (1986)
植物には意識があり、知性や感情があると考えている研究者が増加傾向にあるという記事を2016年に紹介したが(関連記事)、植物神経学なる新しい分野が設けられ、植物の意識についての研究は更に進んでいる。
だがそんな風潮に真っ向から反論している研究者もいる。
アメリカ・カリフォルニア大学サンタクルス校のリンカーン・テイツ氏らによると、植物の細胞が電気信号を送るやり方は、動物の神経系と単純に比較できるようなものではないらしい。
・想像以上にダイナミックな植物
ここ数十年の植物の化学的な研究から学ばれたことがあるとしたら、植物が想像以上にずっとダイナミックな生き物だということだ。
植物は受粉を助ける昆虫の羽音や害虫が自分を食べる音といった、さまざまな音を感じて反応する。
・植物は、耳がなくても聞こえている。花びらでミツバチの羽が立てる音波を感知(イスラエル研究) : カラパイア
触れられれば、嫌そうにするし、麻酔にもかかる。仲間同士でコミュニケーションを図ることだってできるし、記憶がある可能性だってある。
このように特徴を書き連ねれば、なんだかほとんど動物と変わらないように思えてくる。電気信号を使った植物の機能を見れば、そこに意識があるかもしれないと考えたくなるのも無理はないだろう。
だが、こうした観察結果は、感情的な言葉のせいでややこしいものとなる。あまり詩的ではない言葉を使ったとしても、こうした成長反応の測定値や植物ホルモンの変動を意味のあるものとして記述することは案外難しいものだ。

Little Shop of Horrors (1986)
・神経細胞は動物にしかない
厳密に言えば、刺激を処理し、反応を計算する神経細胞のネットワークを持つのは動物だけだ。そもそも植物に灰白質や末梢神経があるなどということは誰も言っていない。
それなのに、植物細胞間で複雑な信号がやりとりされていることや、植物同士がコミュニケーションしているという発見のおかげで、どうにも動物と比較するという誘惑に駆られてしまうのだ。
たとえば植物に「群れの知能」という単語を当てはめてみるとしよう。
この考えによれば、植物の行動は個々の細胞や組織が協力し合うことで生じる。これは、コミュニケーションし、協力し合うことで問題を解決するミツバチの群れに類似しているとされる。
しかし、このような例えには問題がある。
まず、ミツバチはそれぞれが自由に動き回れるが、植物内部にある細胞にはそのような自由がない。また前者の場合、個々のメンバーには大きな遺伝的な多様性があり、これが生殖において重要な違いを作り出している。
・植物に意識はあるか?
だが、そうした例えでも特に困ったものが、少なくとも一部の植物には意識があるかもしれないというものだ。
哲学者たちは、意識をきちんと定義することに、何世紀も前から頭を悩ませてきた。現代の神経科学者たちでさえ、人間の意識を担う生物構造をはっきりと特定することに苦労している。
植物の根の先端で確認された"神経のような"活動を”脳のようなもの”と言って構わないだろうという見解にしたがって、その組織反応を動物の用語で置き換えようというのなら、あまりにも行き過ぎになることだろう。
なにしろ、それとはまるで違うと思われる神経系を持つ動物がたくさんいるのだ。
「さらに、もし意識のない動物がいるのだとすれば、神経細胞すら持っていない植物にも意識などないということに納得してもらえるでしょう」とテイツ氏は言う。

Little Shop of Horrors (1986)
・植物神経学の未来
植物神経学はまだ新しいジャンルだ。これから新たなる事実が次々と発見されるかもしれない。
今後研究が進めば、植物が必要なことを行うために、ある種の計算をしているということが実証され、これらについて再考が促されるようになる日が来ないとは限らない。
しかしテイツ氏は、植物神経学者による実験は彼らの大胆な主張を裏付けるために必要となる厳密さに欠けていると話す。
もちろん、植物にだって意識があると教科書に載るようになれば素晴らしいことだが、今のところはきちんと答えられていない疑問だらけということらしい。
だが一つだけ言えることは、地球の未来の鍵を握っているのは植物であるということだ。酸素を排出してくれるのも植物だし、資源や食料をもたらしてくれるのも植物である。時にオーバーキルぎみな有毒植物や麻薬物質により人間や動物を狂わせたりもするが、それすら意義のあることなのかもしれない。
この研究論文は『Trend in Plant Science』に掲載された。
References:Sorry, But Plants Really Don't Have Consciousness, According to This New Paper/ written by hiroching / edited by parumo