水中のキスは甘くない。多毛類のゴカイ同士が水中でキスする理由とその音が「コッ!」(※ゴカイ出演中)要音声
柔らかい唇同士が近づき、ギュっと吸い付く甘い口づけの音...
なんともロマンチックな響きを想像しているところ申し訳ないが、海に住む生き物たちのキスはそんなに甘いもんじゃない。
わずか20ミリしかないちっぽけなオトヒメゴカイ科の仲間で、「キムラハナカゴオトヒメゴカイ(Leocratides kimuraorum)」は、縄張り争いをするときに口を寄せてマウスアタックを仕掛ける習性があるのだ。
ジェットエンジンすら生ぬるい爆音を鳴らして相手の命を取りにいっているという。
Snippet: Tiny worm make one of the loudest sounds in the ocean
・ゴカイのキスの音、実は爆音
動画では小さなかわいらしい音に聞こえるかもしれないが、京都大学の後藤龍太郎助教らがその音量を測定してみたところ、なんと157デシベルもあった。
ちなみにジェットエンジンの近くで140デシベルで、この時点ですでに肉体の苦痛の限界に達し、聴覚に異常をきたすほどのレベルだ。
柔らかな体をした環形生物がこんな轟音を鳴らすなど、これまで知られていなかった。それを耳にした瞬間、研究者はさぞ仰天したことだろう。

・キスは縄張り争いの為のマウスアタック
このゴカイは2017年になって新種として記載された比較的珍しい種だ。後藤助教らはこれを飼育するために種類の選別を進めていたとき、容器の中でパチパチ弾けるような音を偶然耳にしたのだそうだ。
キムラハナカゴオトヒメゴカイは縄張り争いをするときに口を寄せてマウスアタックを仕掛ける習性があり、コッとか、パチッという音はそれによるものだと考えられている。

・まさに死のキス
「咽頭」という器官をガッと開くと、そこにキャビテーション(圧力差で気泡の発生・消滅が瞬間的に起きる現象)が生じ、破裂音が生じるのだ。まさに死のキス(キス・オブ・デス)だ。
ちなみに水の外に出したときの音量は指パッチンくらいの音らしい。
だが広大な海には上がいて、シナルフェウス・パラネオメリス(Synalpheus paraneomeris)というテッポウエビの仲間は、189デシベルというガラスが割れるほどの衝撃波でエモノをKOするそうだ。
References:sciencedirect / researchgate/ written by hiroching / edited by parumo