「第55回夏の甲子園」“昭和の怪物”江川卓に日本中が湧き立った! (2/2ページ)

アサ芸プラス

これがどれほど一大事だったかは、試合を中継していたNHKのアナウンサーが「スコアボードの1点がひと際大きく見えます」と実況したことでわかろうというものだろう。

 だが、作新も7回裏に相手のエラーに乗じて同点に追いつく。そしてそこからはチャンスの連続。9回裏、延長戦に突入した12回裏と1死満塁のサヨナラ機を作るが、柳川商のアンダースロー・松尾勝則の力投の前に後続が凡退し、なかなか江川を援護出来ない。14回裏には江川みずからが三塁打を放って一打サヨナラの場面を作ったのだが、ここで柳川ベンチは驚天動地の采配を見せる。なんとセンター・松藤が内野に回り、投手と三塁手の間に守る“内野5人シフト”を敷いたのだ。この奇策で作新サイドのスクイズを阻止。このまま大会規定の延長18回引き分け再試合が濃厚かと思われた。

 しかし、幕切れはあっけなく訪れる。延長15回裏、作新は2死一、二塁のチャンスを作ると1番・和田幸一が中前へ安打。二塁ランナー野中重美がきわどいタイミングながらも本塁を狙うと、柳川商のキャッチャー・三宅文三男がボールをこぼし決勝点。こうして作新は2‐1で辛くもサヨナラ勝ちを収めたのである。

 この試合,江川は15回を投げ、被安打7、与四死球3。そして奪三振はなんと23をマークした。このまま記録を作り続けていくかと思われたが、続く2回戦だった。2年生ながら好投手・土屋正勝(元・中日など)擁する銚子商(千葉)にまたも大苦戦。雨中の投手戦の末、延長12回、0‐1で押し出しのサヨナラ負けを喫してしまう。あまりにも短い最後の夏。“昭和の怪物”江川は涙雨とともに甲子園を去っていったのであった。

(高校野球評論家・上杉純也)=敬称略=

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